KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 「ヴィクトール!!」
 「ディア様!?」


 アンジェリークが倒れ、入院した事を軍に知らせて3日後、病院にいるヴィクトールの所に
目立たない装いのディアが駆け付けた。


 「ディア様、わざわざ聖地からおいでになったんですか?」
 「アンジェリークが倒れたとの連絡が入ったのよ。
  あなたから軍に出された連絡事項は全て私の所にも報告が入るの。
  それで容態は?」
 「‥‥あまりよろしくありません」


 ヴィクトールは心痛な面持ちで医師の言葉を伝えた。

 階段を転げ落ちた時に、全身のあちこちを打撲しており、それらの治療に数週間かかる事。
階段から落ちた理由としては貧血が主とされ、極度の疲労からくる体の異変は
ずいぶん前から患者自身に自覚症状があったと思われる事。
 それを我慢し続けた事による過労のような症状があるという事。
また、薬の効きや怪我の治りが異様に遅い事が、医師による診察の結果だった。


 「過労‥‥‥‥」
 「はい。しばらくアンジェリーク様のお側についていて判ったんですが
  アンジェリーク様は体調があまりよろしくなく、外を1日歩き回っただけでも
  次の日はベッドから起き上がる事もできないほど、具合を悪くしておいででした。
  一度、病院に行く事をお勧めしたのですが、薬は効かないからと言われてしまって‥」
 「そう‥‥‥。きっと聖地に居た頃からね。それに気がつく事もできないで
  彼女をこんなになるまで我慢させてしまってたなんて‥‥‥‥‥」


 ディアの桜色の瞳から、ぽつりぽつりと涙が流れ出した。
それを拭いながら、ディアはヴィクトールに一度ホテルに帰って休むように伝えた。


 「しかし!」
 「この3日、ろくに休んでもいないのでしょう?。
  わたくしも姑くはこちらに居られますから、今日はもう帰ってゆっくりとお休みなさい」







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 その頃アンジェリークは病室で眠りについていた。
うつらうつらと、起きては寝て起きては寝てが続いている。
ふと開けた視線の向こうに、アンジェリークはクラヴィスの姿を捕らえた。


 「‥‥また幻?。本当にどうかしてしまったのかしら私‥‥‥」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
 「ちょうどいいわ。夢なら夢で。私、あなたに言いたい事がたくさんあるの」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
 「女王試験が進んで私の退位もまじかになった頃、ディアからある報告を受けたわ。
  女王候補である1人が、女王試験を放棄したと。
  その理由として、クラヴィス‥‥‥‥‥あなたと共にいる事を選んだ為だって‥‥」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
 「私、あなたはきっと待っていてくれているものだと思ってた。
  女王でなくなって、あなたのもとへかけていけば今度こそ、差し伸べてくれた手を取る事ができる。
  今度こそ、あなたの側にいる事を何の躊躇もなく選ぶ事ができる。
  なのにあんな報告を受けて‥‥‥‥。ショックだった私。
  なんで!!、どうしてって‥‥‥独りで部屋で泣いたわ。
  どうして今になって他の子を選ぶの?。それがどうして女王候補のあの子なの?。
  ならどうして私じゃダメだったの?‥‥‥って」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥」
 「でも、そう叫んであなたにぶつかる勇気もなかった。言い訳にしかならないけど
  あなたがあの子と一緒にいる時の顔を見たら、もう‥‥何も言えなかった。
  どう足掻いても、私が夢見た通りにはもう成らないんだって‥‥‥。
  結局は私の勇気の無さがいけなかったのね」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥お前が、滅びゆく宇宙にとってたった一つの必要な存在な事を
  あの時、私は薄々感じ取っていた。
  日に日に生命力を失っていく宇宙と自分を比べて、その宇宙からお前を奪う事はできなかった」
 「‥‥クラヴィス」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥お前が私に人を想う事を教えてくれたのだ。
  知らなければそれでも構わない事だったが、一度知ってしまえば‥‥‥‥」
 「‥‥そうね。一度人を愛する事を覚えてしまえば、もう独りでは居られないわね」
 「お前は大事な存在だ。それは今も変わらない。私にとって‥‥‥‥。
  お前とのあの出逢いがなければ、今の私は存在しない」


アンジェリークの閉じたまぶたの縁から、一筋の涙が流れた。


 「‥‥クラヴィス、聖地であなたと別れた時の事を覚えてる?」
 「‥‥もちろんだ」
 「あの時、私あなたに嘘をついたわ。”幸せになってね”なんて‥‥‥心にも無い事を‥」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥」
 「あの言葉は精一杯の私の嘘。今も心の底からは言えないわ。でも‥‥。
  あの時は言えなかったけど、今ならやっと言えそうな言葉があるの」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥」
 「”さよなら”」
 「‥‥‥アンジェリーク」
 「さよなら、私のまだ大好きな人」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥」
 「‥‥‥‥さようなら‥‥クラヴィス」


 クラヴィスは何も言わずにアンジェリークの額に手を当てた。
そこからはサクリアではない、彼自身の優しさが染み込んでくる。

 女王候補生だった頃にもこんな事があった。
あの頃に戻れれば、アンジェリークは迷わずクラヴィスを選ぶだろう。

 あの時は額にあてられたクラヴィスの手の温もりに安らぎを感じたものだった。
その手に自分の手を添えて、眠りにつくまでクラヴィスはずっと側に居てくれた。






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もう昔を思い出すのは、これで最期にしよう。
きっとこれからは、今までのように悲しみに暮れる事も無い。
私が新しい恋を見つけるまで、クラヴィスの事は忘れていよう。
私が幸せになった時‥‥‥、きっと彼の事を懐かしく思い出せるようになる。

きっと、笑顔で言えるようになっている筈。

”幸せになってね”って…。








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このお話はこのすぐ前のお話と続けて書いていました。
その時、友人に借りた「MISIA」の「LOVE IS THE MESSAGE」のアルバムを流しっぱなしにしていて
その中の一曲がとてもこの場面にぴったりな歌詞で、自分で書いててほろりとしてしまいました。
興味のある方はこのお話を読みながら、この曲も聞いてみると臨場感ばっちりです。
曲名は「アツイナミダ」です。
「あの日のように」はこれの前の場面にぴったりです。






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