昔話〜前風 03



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 二人が部屋に帰ってきた時、炎の守護聖の執務室には風の守護聖がいた。
部屋の主が帰った事に気がつくと、少し焦っているように、二人に近付いてきた。


 「アイギスどこにいるか知らないか?さっきからずっと見当たらないんだ」
 「あぁ、少し前に見掛けた。その事でお前のところに行こうと思ってたんだが‥‥」


 炎のはカディナールをソファに下ろして、その場所から離れた所で
風のに自分が知っている限りの出来事を話し、事情を聞いた風のは「すまん」と言い残して、
アイギスを探しに部屋を飛び出していった。






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 風のは、アイギスを探して聖地の中をあちらこちら走り回ったが、どこにも
その姿は見当たらなかった。ふと考え込み、屋敷に戻ってはしないかと行き先を変えて、
じっとりと汗をかくのも気にせずに走っている姿をその日は多くの人物が目撃している。


 「あら?旦那様‥‥。まだ執務のお時間では?」
 「アイギス来なかったか?!」
 「いいえ?朝お見送りしてから見掛けていませんが‥‥‥」
 「そうか‥‥(ここでもなければ一体どこに‥‥?)」


 その時焦っていたせいか重要なことを彼は忘れていた。
去り際にメイドが漏らした言葉にその事を思い出して振り返った。


 「あら?2階の窓が開いてる‥‥。ちゃんと閉めたはずなのに、変ねぇ‥‥」
 (そうだ!アイギスなら気付かれずに忍び込むのも、2階から入り込むのも‥‥!)
 「あっ!旦那様?」


 彼は扉を開け放して窓の開いている2階へと階段をかけのぼった。
閉められた扉にそっと耳を当てて中の様子を伺うと、中からは微かに泣き声が聞こえてくる。
ほっと胸をなで下ろして、彼はゆっくり扉を開けた。






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 「うっ‥‥‥‥うぇっ‥‥ぐす‥‥」


 明かりが落とされて真っ暗な部屋の中に子供がすすり泣く声が響いていた。
声を押し殺しても押さえ切れず、その声は部屋の外にまで響いている。
 キィ‥‥と静かに扉は開いて、彼の人が声の主を探して部屋の中をうろついた。
少年はたっぷりと寄せられたカーテンの裾の中に隠れるようにそこにいた。


 「アイギス‥‥どうしたんだい?そんなに泣いて‥‥」
 「うぇっ‥‥‥‥うぇっ‥‥ぐす‥‥」


すんなり話し出せないほど、アイギスは酷く泣いていた。


 「急にいなくなるから、心配になって随分探してしまったよ。
  話してご覧。一体、何があったんだ。ん?」
 「せ‥‥先生。自分には無理です、勇気を司る守護聖なんて‥‥。いやです」
 「どうして!?誰かに何か言われたか?」


アイギスはふるふると首を横に振った。


 「いろんな事を知れば知るほど、自分がどんな重い罪を犯してきたのかを思い知らされます。
  知らなかっただけでは許されない事です‥‥」
 「確かに君が今までしてきたことは、いけないことだ。でもそれは君が悪いんじゃない!
  君を取り巻いていた環境が悪かったんだよ。一度反省したらそれ以上苦しむ事はないんだ‥」


アイギスは再び首を横に振った。


 「自分程、勇気がない人間には無理です。‥‥夢を見るんです。
  自分は紅く汚れていてるんです。やっとできた大事な人達も傷つけてしまう。
  誰も、僕に関わっちゃいけないんです」
 「アイギス!!君は汚れてなんかいないよ。よく聞きなさい。
  君ほど勇気がある人間は僕は見たことがないよ。初めて君に会った時からそれは感じていた。
  最初に君を見つけた時、君はどこにいた?」
 「お‥‥お仕置部屋」
 「何故そこにいたの」
 「仕事をしくじって‥‥」
 「どうして失敗したの。そんなに大変な事だった?」
 「いいえ‥‥‥‥簡単な仕事でした。でも‥‥わからなくなって‥‥」
 「わからないって何が?」
 「御主人に言われるままに人を殺める事が‥‥。皆「死にたくない。助けてくれ」って言いました。
  でもそうしないと僕が御主人に怒られるから、やっぱりやらなくちゃいけなくて‥‥。
  でもずっと苦しかった。それがどうしてなのかわからなくて‥‥」
 「そう!それだよ。それがいけない事だと誰も教えてくれる人のいなかった環境で
  君は自分で気付く事ができたんだ!。それは凄いことだよ」
 「す‥‥ごい?」
 「あぁ。そして罰を受けるのを知っていながら、君は相手を逃がした。
  それが勇気でなくてなんていうんだ!!。僕は皆に自慢してまわりたいくらいだ。
  君は最高の後継者だとね」
 「先生‥‥‥‥」
 「だからもっと自信を持って、アイギス。
  僕の目は確かだったことを、皆に知らしめるように‥‥‥‥」


 アイギスはまたしゃくり上げて泣いている。
彼の人は優しく胸に抱き寄せて背中をさすりながら言い聞かせるように囁いた。


 「君はまだ幼い。背負ってる罪も、これからいくらでも償うことができるんだよ。
  余りある時間と大役が君にはあるんだから‥‥。
  だからもう、こんな風に自分を責めて独りで泣かなくていいんだよ」
 「‥‥先生‥‥‥僕どうしたら‥‥」
 「何が?」
 「‥カ‥‥カディナールに酷い事しました‥‥」
 「悪い事をしたと思ったらその相手に謝ればいいんだよ」
 「謝る?」
 「そう。「ごめんなさい」ってね。それで相手が許してくれなくても、その気持ちを
  相手に伝える事ができれば、きっと許してくれるよ」


 彼はアイギスの背中を優しくぽんぽんと叩いた。
アイギスは一生懸命、涙を止めようとしているがそれは中々止まらず、彼の胸を濡らし続けた。
それでも、アイギスは立ち上がって頬を流れる涙を拭っている。
 落ち込んで、ふさぎ込んでこの場所に逃げ隠れていたアイギスが
自分から立ち上がった事が嬉しくて、その目線に自分の目線を合わせて彼は微笑んだ。




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