TheFirstImpression



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 その日、ライは下界のある惑星に降り立っていた。
鋼の力の暴走の兆しがみられる惑星。最悪の事体になる前に早めの対策を、という
女王陛下の命を受けて。
仕事はそう難しいものではなかった。
急激にではなく少しずつその惑星にしみる鋼のサクリアを、自分の手に戻す。
天井の見えない発展を望むその惑星は、遠い聖地からではサクリアの吸収が
あまり効果を得られなかった為である。

 夜になってライは外へと出かけた。作業だけして後は大人しくホテルで缶詰め
など、ライに求めるのは無理な事。
それでも極力騒ぎは起こさないようにと、一般にまぎれての夜遊びだった。
といっても、珍しい部品や初めて見る構造をした機械を漁ったり
見た事のない生物を観察したり‥‥‥など、という部類の「夜遊び」だったが。


 「‥‥‥‥う〜〜ん‥‥‥」


 得に成果のない夜遊びにそろそろ飽きてきたライはホテルへと帰る為に
今来た道を戻ろうと振り向いた。
するとそこには、こんな夜遅い時間帯には不釣り合いな小さな子供が立っていた。


 「‥‥??」


 目線があうと子供は”にかっ”とライに向かって笑いかけた。
その口からは、生え揃わないかわいらしい歯が覗いて見えた。
 近くには親と思える大人は存在しない。
この子供に目を向ける大人が誰もいなかったからである。


 「‥‥‥どうした?ぼうず」
 「‥‥‥」


 ライの問いかけも、理解しているのかしていないのか子供はただただ
ライに向かって上機嫌な笑みを見せていた。
数歩進むと子供もライについて数歩進み、止まるとまた止まる。
 ライはしばらく無視していれば、やがて親の姿を探しに引き返すだろうとふんで
その子供には構わずに、帰路へとついたが‥‥‥


 「‥‥‥‥‥_ー#」


 何歩進んでも子供はライの後をついて歩いてきた。歩みを止めたライの足元に
しがみつき、上を見上げて再びにカッと笑う。その屈託のない笑顔にライは毒気を抜かれて
とうとうそこにしゃがみ込んだ。


 「ぼーず、名前は?」
 「‥‥ぇる‥」
 「える?」


 したったらずな言い方で子供は名前を名乗ったが、それの全てをライは聞き取る事が出来ず
”エル”という部分しか分からなかった。


 「エル、誰かと一緒だったんじゃないのか?。」


 エルはフルフルと首を横に振った。ライが自分に構ってくれる事を理解すると
その場に座り込み、たすきがけにしていた小さなバックから正方形のパズルを取り出した。
一面が9つの面に分かれその一つ一つを6色の色が彩っている。
たて横に面をひねって一色を一つの面に集める「キューブ」。


 「お前にはそれはまだ早いんじゃないのか?。できないだろ」


 エルくらいの子供が楽しめるおもちゃではないそれに、ライは興味を示した。
だいの大人でも6面全てを同じ色で統一するのは困難なのに、歯も揃わない程度の子供に
与えるおもちゃにしては、高度すぎるそれ。


 「‥‥ったくー、親は一体何してんだよー」


 ライは地べたに座り込み人工的な灯りで星の見えない夜空を見上げた。
バラバラに色の散っていたキューブを、カチャカチャとエルがいじる音が耳に心地よく響く。
ざわざわとした煩わしい雑踏が気にならない程に‥‥。

 ライはふと、エルの持っていたキューブをいじりたくなった。
普段は、仕事仲間でさえ「気難しい」と遠巻きに自分を眺める事があり
子供どころか、自分のまわりにいる人間は皆、自分に相対する時は顔を強張らせ
早々に用件を済ませて離れていくし、子供に泣かれる事もそう少ない事ではなかった。

 しかし、視察に降りた惑星で急に懐かれたこの”エル”という子供に
キューブを全面揃えて驚かせてやりたい、という気持ちがむくむくと心の中に広がり始めていた。


 「おい、エル。それちょっと貸してみな」


 そういってキューブに目を向けたライは、ここ最近なかった驚きを体験した。
エルは、ライが夜空を見上げて物思いに更けている数分の間に6面6色のうち
3面3色をすでに揃えていた。
 ついさっきエルがそれを取り出した時は、確かに1面に6色が散っていたのに!。


 「エル!?。それ‥‥‥‥‥‥」
 「‥‥‥‥‥」


 驚きで目を見開いているライに向かって、エルはまたニカッと笑った。
そして、エルの両手にもこぼれそうな程の大きさのキューブを
自慢げにライに差し出した。
 出されたキューブをテにとって、ライは驚きを隠せなかった。
揃っていたのは3面だったが、他の面も後数回で色が揃いそうな程にパズルは
完成されていた。

 ライがみっともなく口を半開きにさせてキューブを眺めていると、
遠くでエルの母親がエルを呼ぶ声が聞こえたのか、エルは立ち上がって人込みの中にかけていった。

 そしてライの手には、3色揃ったキューブが残った。






 「まぁ、一体どこにいっていたの?。お母さん探しちゃったわよ。
  ‥‥あら?、お気に入りのキューブはどうしたの?」
 「‥あ‥‥‥えたの」
 「あげちゃったの?。あんなに気に入ってたのに‥‥」


 母親はエルを抱え上げて、帰宅についた。エルのこの惑星ではそう珍しくもない
くすんだ銀色の髪を撫でながら‥‥。














 「カティス!」
 「ん?、ライじゃないか。ずいぶん早いお帰りだったな」
 「お前、これ揃えられるか?」
 「えぇ?、一体なんだ?急に」
 「ちなみに、ルヴァに昨日渡して今日見に行ったら一晩かかってやっと3面揃えてた」
 「‥‥ふ‥‥‥‥む‥‥」


 ライに押し付けられたパズルは、他にも数人の守護聖の手を渡ったが
そのうち誰1人として、あの”エル”以上に早く3面揃えられるものはいなかった。



 「‥‥‥‥‥‥‥‥」


 ライは手に中にある”キューブ”を眺めて、少年の顔を思い浮かべた。
何となく記憶に残る子供。きっと自分の同じ部類の‥‥同じ匂いのする人間。



 「‥‥惜しかったな。もう少し大きければ手元においてあれこれ教えてみたかったな‥‥」


 ふとそんな考えが口をついて現れた。
3面揃ったキューブはそのまま、ライの入り浸る研究部屋の引き出しの中にしまわれた。

 そしてライはそのキューブの、一角が外れてそこに書いてある”エル”の名前を
見る事は、聖地を出ていくその日までなかった。

 そこには小さく”Z・e・p・h・e・l”と、書いてあった‥‥‥‥‥。




■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■END




キリ番「3000」を踏んだ:R-calさんからのリクで
「前鋼でおまかせ」
というものでした。
リク受けたのは7月16日。‥‥‥こんなに時間がかかってしまったのは初では??。
待たせて待たせて待たせた挙げ句にこんな落ちですいません。
なんか色々ネタを考えてる家にぐるぐるしてきちゃいましたー。
ライの台詞しかなかったのにも関わらず、ライの性格があまり見えてきませんでしたー。
そこは私の力不足‥‥‥申し訳ない。
でも愛情はこもってます!。よかったら貰ってやってください(懇願)!!






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