昔話〜光



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 家族。

ディアやアンジェリークからは時たまそのような言葉を耳にする。


 「感謝祭はいつも家族で祝いました」
 「家族皆で馬に乗って遠出をしたり‥‥‥」


 私は5歳の時にこの聖地にやってきた。新たな光の守護聖として招かれ、
以来ずっと聖地で暮らしている。父母の記憶はおぼろげながらもまだあるが、
家族という言葉にはあてはまる存在ではない。
 ”家族”という言葉を聞いて私が思い浮かべるのは”二人”‥‥‥。






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 「‥‥‥‥‥どういたしましょうか‥‥‥」
 「ならこうしましょう。彼がある程度成長するまで、私が親代わりを勤めましょう」
 「‥‥‥しかし、それではあなたも忙しくなるんじゃありません?」
 「いいえ。子供は好きですよ。それにやつと二人きりではこの子が可哀想だ」
 「‥‥そうですね‥‥、あの方も難しい方ですから。じゃあ、お願い出来ますかしら?」
 「はい」


 腰までの長い栗色の髪を一つに束ね、新緑の色を纏った男性が
向かい合って話をしていた物腰の穏やかな女性から視線を外し、私の方を向いた。
纏めた髪に飾られた幾つもの薄い金の飾りが、彼が歩く度にシャラシャラと音をたてる。
やがて彼は私の前で足を止めて、彼の膝くらいにしかならなかった私の身長に合わせてしゃがみ込み
目線を合わせて柔らかく微笑んだ。


 「じゃあ今日から君は私の屋敷で過ごす事になったけど、大丈夫かい?」
 「はい。よろしくお願いします」
 「君の先代になる光の守護聖はなかなか気難しい奴でね。悪気はないんだが
  人に気遣いが上手くできないやつで、君と二人きりで過ごすのはお互いに大変だと思うんだ。
  だから、私が君と一緒に過ごす事になったんだ。これからよろしくね」


 そう言って、彼”ウェルウァイン”は私を抱き上げた。目線が変わり彼が私を見上げる程に
高く抱きかかえられて、幼心に私は何だか恥ずかしかった。
両親にでさえそんな風に抱き上げられた事などなかったからだ。
 父母の私に対する愛情が薄かった訳ではない。
ただ子供の面倒は親ではなく”乳母”と呼ばれる存在に全て任せるのが
彼等の育ってきた環境で、両親もまた親に抱き締められた経験などなかったのだろう。
 なかなか私を放さない彼に私は顔が赤くなるのを感じながら訴えた。


 『‥‥‥‥あの‥‥‥‥降ろしてもらえませんか?」
 「え?、抱き締められるのは嫌いかな‥‥」
 『そうじゃないですけど‥‥‥‥‥その‥‥馴れてないんで‥‥‥」
 「スキンシップは君が大きくなるのにとても大切なものなんだ。
  君の心が成長していくのに、なくてはならないものなんだよ。
  それに、人と触れあうのは僕が好きなんだ。そのうち馴れてくるよ」


 そう言ってまた柔らかに笑うと、彼は私を抱き上げたまま屋敷への馬車に乗り込んだ。
ウェルウァイン様のお屋敷は、彼の故郷が色濃く写し出されていた。
家具や調度品の数々、壁に掛かる絵画や部屋の中に広がる香の薫りに、屋敷で働く使用人の
きていた洋服にさえ、それは徹底していた。
 私は初めてみる空間の中で聖地での最初の夜を過ごした。





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 「おはようジュリアス。よく眠れたかい?」
 「はい。おはようございます。ウェルウァイン様」
 「ん〜〜?」
 「??何ですか?」
 「ジュリアス、嘘はいけないな。目が少し赤い。擦った痕もある」
 「え!?」


 そんなはずはない、ここに来る前に鏡もちゃんと見てきたのだから‥‥と咄嗟に
手で目もとを隠したら、ウェルウァイン様は笑顔を見せて私の額を小突いた。


 「嘘だよ。でもやっぱり泣いたのかい?」
 「なっ泣いてなんかいません!」
 「そうかな‥‥?」


ウェルウァイン様は私の額にかかる髪をかきあげて前髪の生え際当たりに挨拶のキスを残した。


 「まあいい。今度から眠れなかったら私の部屋においで。隣だからすぐ解るだろう。
  おいで。朝ご飯を食べよう」


 後に解る事だが、ウェルウァイン様は面倒見のとてもよい方で、人の世話をするのが
趣味のようだった。奉仕の精神とでもいうのだろうか?。ウェルウァイン様が守護職を
降りられる日まで私はずっと子供扱いだった。


 ”体ばかり大きくなってちっとも成長しないんだから‥。”


 よくそうお叱りを受けた。最後の最後までそれは変わらずそのうち、あの方に認めてもらうのが
私の望みになった。





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 先代の光の守護聖様に御会いしたのはその日で2回目だった。
最初は初めて聖地に訪れた時に補佐官様に紹介をして頂いたが、緊張のあまりどんな方だったか
申し訳ないのだがよくは覚えていなかった。先代も少し緊張されていたようだった。

 普通新しく選ばれた守護聖は、一人前となるまで先代の守護聖と同じ屋敷で暮らすのだが
何故私はその例にそわずに、地の守護聖であったウェルウァイン様のお屋敷で暮らす事になったのか
その理由を身を持って知る事となった。


 ”悪気はないが人を気遣うのが苦手”


 ウェルウァイン様は先代をそう表現した。それを感じたのは先代に聖殿の中を案内されていた
時の事。もうすぐ30になる先代とやっと5歳を迎えた当時の私とでは、もちろんだが
体のサイズが違う。サイズが違うという事は足の長さも違い、一歩で進む距離も違うという事。
 先代は私に構う事なく、いつもの自分のペースですたすたと先を歩いている。
私は追い付こうと必死になってその後を追ったが、差は歴然で追い付けるものではなかった。
そして当然のごとく私は聖殿で迷子になった。


 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


 右を見ても左を見ても、どこもかしこも似たように見えて私は途方に暮れた。
とにかく先に進んでみれば先代がいるかもしれないと、一つ先の曲り角まで走ってみても
そこに先代の姿はなかった。

 ふと、ウェルウァイン様のお顔が頭の中に浮かんだ。私はどんどん心細くなって
目は涙で潤み始め、そんな時に限って誰も見当たらない聖殿の中で言い様のない不安に襲われていた。
人の声も気配も何も聞こえず、耳に入ってくるのは風が流れる音と木々のざわめきだけ。
まるで誰も人がいないようなその静けさに、私の不安は増々大きくなった。


 「何してる!」


 突然背後からかけられた声に私は驚き、しかしそれはすぐに人に出会えた安心に変わった。
急いで振り返ると、そこには黒に近い深い群青色に身を包んだ人物が立っていた。


 「‥‥あの‥‥」
 「?‥‥‥君は確か‥‥‥‥‥そう、ジュリアスだったかな?、新しい光の守護聖の‥」
 「はい!」
 「やっぱり。こんな所で何をしてるんだ」
 「‥あの‥‥‥」


 私は”迷子になった”とは恥ずかしくて素直に言えずに俯いてしまった。
しかしその方は何かに気付いたようだった。


 「‥‥‥は‥‥はぁ〜。わかったぞ。あいつだな‥‥」
 「?」
 「ったく‥‥‥。あれ程気をつけろと言ったのに!」


 その方は眉間に皺を寄せると視線をある部屋に向けた。
私をぬかして歩き出し、数歩進んだ所で止まり私に声をかけた。


 「ついておいでジュリアス」
 「‥‥はい」


 足元までも覆い隠すマントを翻して歩きながらも、後ろを歩く私にスピードを合わせて下さったその方は
二つ先の部屋の戸をノックも無しに思いっきり叩き開けた。


 「!!!」
 「やあ」
 「‥‥ああ?。何だ一体‥‥。あ!それより、ジュリアスを知らないか?。
  気がついたら居なくなってたんだが‥‥‥」
 「君の忘れ物を連れてきたよ」


その方はマントの影に隠れてしまっていた私を、前へ通しやった。


 「ジュリアス!!」
 「一体何度言えば君は解ってくれるんだ!?。あーーーっんなに口を酸っぱくして!
  ウェルウァインと二人で!散々君に注意しただろう!?。
  君の後任で来る守護聖はまだたったの5歳なんだって事を!!。
  君の自分勝手なペースには100%あわせられないんだから、き・み・が
  ジュリアスに合わせろって、あんなに!あんなに!!あーーーーーっんなに!!!
  注意しただろうが!!」
 「‥‥わ‥‥‥解ってルよ‥‥‥‥」
 「なら何でたった一回でも後ろを振り返るって事ができないんだ!!?」


 その方は私や先代の秘書の方の存在も、まるで忘れてしまったかのような勢いで
先代を叱り始めた。長々と続くその”お説教”は15分続いた。


 「‥‥‥‥‥‥‥まったく」
 「わかったよ。私が悪かった。反省してます。次からは気をつけるから‥‥」
 「当たり前だ!」
 「‥う‥‥‥‥もういいから、部屋に戻ったら?。君の秘書がずっと戸口で待ってるよ」


振り返ったその方は一直線に私の元へと歩いて来て、私の視線に合わせてしゃがみ込んだ。


 「ジュリアス。今度何かあったらすぐ私の所においで。ウェルウァインの部屋はここからは
  一番遠い端になるし、ここのすぐ隣が私の執務室だから迷う事もないだろう。
  挨拶が遅れてしまったが、私は闇の守護聖だ。これからよろしく」
 『はい。よろしくお願いします。』

 それがウェルウァイン様、先代に続いて3人目に御会いした守護聖だった。





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 闇の守護聖様は大分変わったお方だった。自分よりも5つも年上の先代を、まるで子供扱いし
ことあるごとに先代を叱りつける。9人いる守護聖の中では一番の年上と聞いている先代も
なぜか闇の守護聖様の前では子供のように見えた。
 年の差を気にしない闇の守護聖様は、先代の数少ない気を許せる人物であったようだ。
執務の合間にもよくお茶を御一緒したが、まだ5歳だった私にも気さくに声をかけてくれた。

 ウェルウァイン様の取り計らいで、私が聖地に慣れるまで他の守護聖様方への紹介は
引き延ばされていた。幼い私が目まぐるしく変わる環境の変化についていけるよう
気遣って下さっての事だった。

 聖地に訪れて1年程が経とうとしていた時、私はウェルウァイン様に呼ばれた。
その頃は私も大分聖地に慣れ、光の守護聖としてサクリアのコントロールを次第に覚えてきた頃
珍しくウェルウァイン様が御自分の執務室まで私をお呼びになり、足を向けた私は
もう1人の”家族”と出逢う。


 「ジュリアス、今度闇の守護聖が交代するという話はもう聞いたよね」
 「はい」
 「それで後任の少年が今日聖地に訪れたんだけど、ジュリアスと同い年らしいんだ。
  それで、その子も私が預かる事になったんだが‥」
 「‥‥‥はい‥‥?」
 「ほら、同い年なら色々と‥‥‥その‥‥なんだ‥‥‥‥、きっとこれから
  ジュリアスと一番長く付き合っていく友達になると思うんだ。だから一緒の方が
  親ぼくが深められていいだろう?」
 「はい。皆様私とは年の離れた方ばかりですし、私と同じ年なら私も楽しみです」
 「よかった!!。きっとジュリアスならそういってくれると思ったんだ」


 ウェルウァイン様は席を外して隣の部屋に向かうと、私よりも少し背の小さい
黒髪の少年を連れてお戻りになった。私の前まで少年を連れてくると、そこに少年を残し
席に戻られた。


 「じゃあ紹介しよう。ジュリアス。新しい闇の守護聖のクラヴィスだ」
 「よろしく。私はジュリアス。光の守護聖だ。私もまだ聖地に来て1年程だけど
  解らない事があったら何でも聞いて欲しい」
 「‥‥‥‥‥‥‥」


 クラヴィスは無表情のままウェルウァイン様の方を見ると、ウェルウァイン様の合図を
目にしてから視線を私に戻し、私が差し出した手をとった。


 「‥‥‥クラヴィスです‥‥‥」
 「クラヴィスはまだ緊張しているようだね。でもきっとすぐにリラックスできるよ」


 ウェルウァイン様の向けた笑顔に少しながらも、クラヴィスの強張った表情が和らいだ。
この方の笑顔には裏に隠れるものが何もない。だからそのお顔を見るとすごく心の中が
落ち着いていき、つられるように私の顔も綻ぶ。
”聖地に来てよかった”と最初にそう思ったのは、ウェルウァイン様に会えた事だった。





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 私とクラヴィスとウェルウァイン様との、3人で過ごす毎日が3年程流れた時の事。
その頃のウェルウァイン様には頭を悩ませている事があった。クラヴィスの事だ。
 クラヴィスはもともと明朗な方ではなかったが、慣れない聖地で内にこもる事が多くなり
今では滅多に外に出なくなってしまっていた。私やウェルウァイン様と共にいる時は
まだ良い方なのだが、他の守護聖の方々と共にいる時のクラヴィスは
大勢の輪の中にいてもいつも1人でいるような孤独感がまとわりついていた。


 「遠出をしようか」


 ある日の曜日にウェルウァイン様がそう言い出した。
私はその頃乗馬の練習をしていた頃で二つ返事をしたが、クラヴィスは‥‥‥、


 「私はいいです」


 そういって陽の光が差し込んだ水晶球を手にもって、自室へと戻っていこうと腰をあげた。
しかし、ウェルウァイン様がそれを止めて再度クラヴィスに誘いをかけた。


 「そういわずに行こう、クラヴィス。部屋の中にこもってばかりで、
  たまには外の空気を吸うのも必要だぞ。森の中をただ歩くだけでもいい」
 「なら、1人で歩いてきます」


 クラヴィスはウェルウァイン様の手をすり抜けると、サンルームを通り抜けて屋敷の前に広がる森の中へと
歩いて行ってしまった。


 「‥‥‥‥‥‥ウェルウァイン様‥‥」
 「‥‥ーおいでジュリアス」
 「‥‥‥?‥」


 ウェルウァイン様は私の手を取ると、部屋を出て外の馬小屋へと向かった。
着替える間もなく、また私の馬を用意する間もなく、ウェルウァイン様の愛馬にひらり、と
またがると、私に手を差し伸べて馬上に私を引き上げた。


 「しっかり捕まっていなさい」


 腹を一蹴すると馬は走り出し、私はウェルウァイン様の背中にしがみついた。
そしてクラヴィスが消えた森の中へと馬を走らせて行った。


 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥いた!」


 数分馬を走らせて、やがてクラヴィスを見つけたウェルウァイン様はそのままクラヴィスへと向かって
馬を走らせた。その駆ける足音にクラヴィスがこちらを向いたがその瞬間には避ける間もない程
距離をつめていて、身を縮ませたクラヴィスをウェルウァイン様は走る馬の上から
馬上に抱き上げて御自分の前にクラヴィスを座らせた。


 「‥な‥‥何をするんですか!?」
 「しっかり捕まっていないと振り落とされるぞクラヴィス」


 クラヴィスの訴えを軽く流してウェルウァイン様は馬を走らせた。
やがて森を抜けて視界が開ける。普段足を踏み入れない初めて訪れる聖地のその場所は
聖地の中に流れる川や湖を一望できる丘の上だった。


 「‥‥クラヴィス‥‥‥クラヴィス、怖がってないで目を開けて御覧」


クラヴィスは恐る恐る目を開けた。


 「あのまま閉じこもったままじゃこの風景は知らないままだっただろう?。
  部屋にこもって静かに本を読む事が悪い事とは言わないが、そればっかりっていうのも
  どうかと思うぞ」


 ウェルウァイン様は馬を止めて下に降りられたが、私達はそのままで手綱を引いて
ゆっくりと歩き始めた。慣れない馬の揺れにバランスが取れず、落ちてしまいそうなクラヴィスを
私は前にずれて背中から支えた。支えるものを失ったクラヴィスは、クラヴィスを支える
私の腕の袖口をぎゅっと掴んだ。
 やがてウェルウァイン様は崖のギリギリの所まで進んで止まると、その景色を眺めた。


 「二人ともみて御覧。遠くの木々に隠れて見える白い屋根、あれが女王陛下が居られる宮殿だ。
  そして、そこからずっと南に下った茜色の屋根が私の屋敷。
  あちこちに点在して見えるのが、他の守護聖達の屋敷だ。その中には光と闇の屋敷もある。
   ジュリアス、クラヴィス。私が未だに二人に自分達の屋敷で暮らす事を許可しないのは
  きっとまだ早いんじゃないかと思うからなんだよ。
  守護聖に選ばれるという事はとても貴い役目だが、その年で親元を離れて見知らぬ者に
  囲まれて毎日を暮らすのは、二人が想像する以上に寂しいものだよ。
   しかし、二人が成長して行けば私も無理に拘束する事はできない。
  やがて自分達の屋敷に帰って行くだろう。だから‥‥‥‥」


ウェルウァイン様はお顔を景色から馬上の私達に向けた。


 「だから残りある時間が許す限り、少しでも長い時間を一緒に過ごしたいんだ。
  頼り無いかもしれないが、私は二人の親代わりを勤めているつもりだ。
  これは人に言われたからやっているのではなくて、自分から進んで君たちと過ごしたいって
  陛下にお願いをしたんだよ。だからクラヴィス‥‥
  何かして欲しい事があるなら、遠慮せずに言って欲しいんだ。
  恥ずかしい事なんか何もないし、どんな事でも君が思っている事を知りたい‥。
  だから自分の気持ちを素直に伝える事を覚えて欲しい‥‥。私にも、ジュリアスにも
  他の誰にでもいい。きっとそれは将来君の為になるはずだ。
  ‥‥‥ジュリアスもね、理解があるのは良い事だが君はまだ我がままを言ってもいい年だよ」


 ウェルウァイン様は私とクラヴィスを交互に視線を合わせながら、笑顔まじりに語りかけた。
ウェルウァイン様には言葉では言い表せない程、たくさんのものを頂いた。
それらは全て目に見えるものではなかったが、どれもこれもなくてはならないものばかりだった。

 やがて、私達は成長しお互いの屋敷に戻る事となった。そうなってみて初めて
ウェルウァイン様が幼かった私とクラヴィスを私邸に引き取った訳を知ったのだ。
広い屋敷の中は時計の音が響き渡る程静かで、灯りを落とされた真夜中の廊下は、まるで闇の底に
続いているように見る事もできる。あやかしのものに恐れる程子供ではなかったが
聖地に訪れた頃の自分では、きっと怯えていただろう。

 もう1人の”家族”クラヴィスは最近は何を言っても聞かなくなった。
まるでやる気がなく、気がつくと執務室を抜け出していたり、陽も高いうちから寝ていたりと
それでいて執務だけは済んでいたりする。全くもってわからない。
たまには心穏やかに話をしたいとも思うのに、顔をあわせる度につい小言が口を出てしまう。
その所為か近ごろは不協和音が続いている。


 「いくら首座だからって、何も全部自分で処理する事はないんだぞ?。
  たまには他の連中を頼ったって‥‥‥。守護聖は9人もいるんだからな。
  得にクラヴィスをもっと頼れ」
 「しかし‥!」
 「お前の言いたい所もわかるけどね、クラヴィスの身にもなってやれ。
  お前が全然自分を頼らないもんだから、まるで拗ねているように私には見えるけどね」
 「‥‥‥‥‥‥‥‥そうでしょうか」
 「まぁ本人がそう言った訳じゃないがね」

 そう言ってウェルウァイン様は私を子供扱いして頭を撫でた。
私だってクラヴィスを頼りにしたい。幼い頃から共に学び、共に育ってきたのだ。
この聖地にいる誰よりもクラヴィスと長い時間を過ごし、これからもそれは続いていくのだから。




 ”家族”
複雑な意味をもつ言葉だ。この言葉を聞くとそれでもクラヴィスとウェルウァイン様が浮かぶ。






†††††††††††††††††††††††††






 「ジュリアス様?」
 「!。ああ、なんだ」
 「先程からずっとお呼びしてましたのに、何か心配事でも?」


そういってディアが私の顔を覗き込んだ。あらぬ心配をさせてしまったようだ。


 「いや。‥‥すまぬ。少し昔の事を思い出していた」
 「昔の事?」
 「私がこの聖地にやってきたばかりの時の事だ」
 「まぁ、じゃあきっとわたくしがまだ生まれてもいない頃ですわね」
 「フッ‥‥‥そうだな」
 「よろしかったらお話をお聞きしたいですわ」
 「ああ。だが今日はもう帰るとしよう。風が少し冷たくなってきた」
 「はい」


 私は腰掛けていた草むらから立ち上がり、ディアに手を差し伸べた。その手をとってディアは立ち上がり
私に笑顔を向ける。性別も年も違うというのに彼女の笑顔は何所かウェルウァイン様を思いださせる。


 「‥‥‥いずれ、そなたにも話そう。私の”家族”の話を‥‥‥‥」





私にもいずれ新しい家族ができるだろう。それが彼女かどうかは今はまだわからないが‥‥。




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オリキャラ「ウェルウァイン」を含めた話を久し振りに書いてみました。
彼はもともと、幼かったジュリアスとクラヴィスを知っている人物って
どんな人だろう‥‥という所から生まれた人で、
常々思っている私の疑問を解消してくれる人です。
それは、
「いくら優秀で素質があるといっても5〜6才の子供をほったらかしはないだろう」
ということ。
クラヴィスはもちろん、ジュリアスもいくら名門貴族の出身で
生まれた時から守護聖と成るべく教育を受けているからといって
5歳ってまだ幼稚園児並じゃない!。
そんなンで独り暮らし(身の回りを世話する召し使いはいたとおもうが)ができる訳がない!。
いや、もし出来たとしてももう少し荒んだ人間になるんじゃないか?
という疑問。
ずっととは言わないがせめて小学校を出るくらいまでは
誰かの保護が必要だろう。
ジュリアスとクラヴィスの”心”を成長させてくれる人が。
クラヴィスもあんんんんなに暗いとはいえ、人を好きになる心は持っていたんだし、
ジュリアスだって人を思いやる気持ちがある。
それって絶対、この二人にそういったものを注いだ人間がいる事だと
私は思う訳です。






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