引き継ぎ



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 ここは地の守護聖の執務室。机の上には首座がまとめるべき書類の束。
そしてその机の前には、輝くブロンドを持った12歳の光の守護聖
ジュリアスの緊張した姿があった。その向かいにはこの部屋の主
地の守護聖、現首座のウェルウァインがいた。


 「ジュリアス」
 「はい。ウェルウァイン様」
 「もう少し気を楽にしなさい。そんなに堅くなる事はないよ」
 「‥はあ‥‥」


 こんな言葉ではジュリアスの緊張は解けなかった。
ジュリアスは首座の引き継ぎの為に、最近よくこの部屋を訪れている。
その度に体をこわばらせ、ウェルウァインの一言一句を聞き漏らさない様に
全神経を集中させている。


 「ジュリアス、ちょっとこちらへ来なさい」
 「は?」
 「早くこの椅子に座りなさい」
 「‥はい」


 ウェルウァインは自分の座っていた椅子にジュリアスを座らせると
肩に手を起きガチガチのジュリアスをほぐしはじめた。


 「?‥‥ウェルウァイン様?」
 「イイから座っておいで。
  ‥‥‥私が首座になったのは11歳の時だったが、それでもなんとか
  今までやれてこれた。お前ならきっと立派に首座をつとめてくれると信じているんだよ?
  だから、もう少し力を抜いてリラックスなさい」
 「‥‥はい‥‥。これでもしているつもりなんですが‥‥」
 「これで?!」


 ウェルウァインは少々呆れる思いだった。これだけガチガチになっておきながら
自覚がないとは‥‥どうしたものか‥‥‥と。


 「ウェルウァイン様‥‥そこはあまりこってないと思うんですが‥‥」
 「いいから‥‥」


ウェルウァインは肩を揉みほぐしていた手を首に回し、素肌の部分を触り出した。


 「‥‥‥あの‥‥‥ウェルウァイン様??」
 「しっ。少し黙って」



 ウェルウァインは首筋に唇を押し付け、耳たぶをかるく噛んだ。
ジュリアスはウェルウァインが何を考えているのか‥‥所か
自分に今何が起こっているのかを把握するだけで、いっぱいいっぱいだった。
 するとウェルウァインは、敏感になったジュリアスの耳に息を吹き掛けた。


 「‥うあっっ!!‥」


瞬間、ジュリアスの背中をぞわぞわと何かが走り、体の力が一気に抜けてしまった。


 「ほ〜〜ら。これが気を楽にした状態だ。 さっきよりずっと楽だろう?」
 「?????。‥‥はい‥‥」
 「私も最初の頃、緊張と不安でガチガチになっていたら、前の首座様が
  気の抜き方を教えて下さったんだよ。やり方は違ったがね‥‥。まぁ‥同じようなものだ」
 「‥‥はあ‥‥」
 「ジュリアス。首座とは女王補佐官とはまた別に、女王に一番近い守護聖として女王を御支えする役目だ。
  そのお前が緊張しっぱなしでどうするんだ?
  大変な時こそ体の力を抜いて、頭を柔らかくして物事を考えるんだよ。
  そうすれば、昨日と同じものも、違って見える事もあるから‥‥」
 「‥はい」
 「解ったら行ってよし。昼食をとったらまた続きをしよう」
 「はい」


 ジュリアスは席をたつと扉へ向かって歩き出した。
戸に手をかけたところで立ち止まり、振り返ってウェルウァインに質問を投げかけた。


 「ウェルウァイン様‥。後学の為に一つお聞きしたいのですが‥‥。
  ウェルウァイン様はどのような方法で気を楽にされたんですか?」
 「私かい?。私はねー‥‥先代に脇腹を思いきり揉まれたんだよ。
  いや〜〜、後にも先にもあんなに笑ったのはあれっきりだったね。
  笑い過ぎてお腹は痛くなるわ、涙は止まらないわで、あの後姑く筋肉痛でお腹が引きつったのものだ‥‥。
  その点、私のやり方は親切だったろう?」
 「‥‥はあ。では、失礼いたします」


ジュリアスは一礼をして部屋を後にした。


 「‥‥‥親切‥‥という言葉で片付くものだったのだろうか‥‥‥」






********************





 ウェルウァインは机の上の書類を片すと自らも部屋を後にし
昼食に向かった。廊下を歩いていると執務室の近い緑の守護聖がかけてきた。


 「ウェルウァイン、君もこれからお昼かい?」
 「ああ。カティス、君も一緒に行くか」
 「最近ジュリアスが君の部屋に行くのを見かけるけど、引き継ぎを始めたと言うのは本当なのか?」
 「ああ。私の時は11歳だったがあの子はもう12になる。
  守護聖にも聖地にも大分慣れたし、そろそろ良いかと思ってね」
 「しかしまたどうして‥‥。君のサクリアは少しも衰えていないのに‥‥」
 「衰えが来てからでは遅いんだよ。その時は、後任の守護聖への引き継ぎもあるのだから。
  今から時間をかけて、きちんと引き継がせたいんでね」
 「ふ〜〜〜ん。そういうものなのか‥‥」


 その時ばたばたと騒々しい足音をさせながら、同じく部屋の近い
夢の守護聖が走ってきた。


 「ウェル!!。カティス!!。なんだ。お前らもこれから飯か‥‥」
 「シレンティ‥‥。あいもかわらずうるさいね‥君は‥」
 「なあなあ、光のこぼーずに首座を交代するってマジ?」
 「ああ」
 「なんでまた?。お前のサクリアには、かげりもなんもないのに‥‥」
 「あ--‥‥。説明するのも面倒臭い。後でカティスから聞きたまえ」
 「後でやったら今教えてくれてもいいだろ。
  ホントお前は男には冷たいなァ。女子供には態度が全然違うじゃん」
 「失敬な。対等な付き合いをしてあげているんだよ。冷たいと感じるのは君の我がままと言うものだ」
 「い〜や!。明らかにオレにだけ冷たいじゃんか!!」
 「なら言わせてもらうが、君のその--!!」
 「まあまあ、そのへんにしておきなさい、二人とも。
  仲が良いのは結構な事だが、もう少し分りやすいコミニュケーションをとりなさいね」
 「「なんでこんな奴と!!」」
 「本当、息ぴったりだよ君達は」


 わいわい言いながらも3人で昼食をとった後、執務室に戻ると
書類をまた整理しはじめた。それから5分とたたずにジュリアスが部屋を訪れ
先程の”マッサージ”がよほど効いたのか、しっかり緊張をといてきた。
物覚えの早いジュリアスに業務を教えながら、引き継ぎは順調に進んでいった。




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ウェルウァインはこんな人物です。。。。てわからないか‥。
まだ漠然としたイメージしかないんで。
前夢の守護聖「シレンティ」は突発的に書いただけで
はっきりとした性格づけがある訳じゃありません。のでそんな感じです。






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