Stand By Me



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




See Me





 汽車のドアが開いた瞬間、リルヴェ−ルは段差を飛んでホームに降りた。
乗り込む人をかき分けて駅の外に出ると、賑やかな街から少し離れた小高い丘の上の我が家を目指した。
クラヴィスの水晶に写っていた樹は、クリフトと過ごした家の横にたっていた巨木で
そこにオスカーがいると確信し、まだそこに居てくれる事を願いながら……。

 「おや?。リルちゃんもう帰って来たのかい?」

 親しい人の声にも気付かずリルヴェ−ルは街の中を走った。辺りはもう暗く空には星が飾られている。
毎夜がお祭りのように人が賑わい道を塞いでいた。暗くなって店を閉める所と入れ代わるように
夜になって開く店が夜の街を照らし、昼と変わらぬ人の流れに逆らうように
リルヴェ−ルはその合間を走り抜けた。



 街を少し外れて目の前に坂が広がる。毎日歩いたその光景にリルヴェ−ルは懐かしい気持ちが
込み上げて来た。ここを離れてからまだ10日程しかたっていないのに……。
 息を切らしながら坂を昇っている間、リルヴェ−ルは不思議な感情に心を染めていた。

 「………クリフト……。もしかしたらオスカーはあなたが連れて来てくれたの?。
  だって、あなたが居ないのに私笑う事ができるのよ。………まだ一月もたっていないのに…。
  あなたが居なくなって襲って来た苦しみに、私が溺れないでいられたのは
  オスカーがいつも側に居て、私に孤独を感じさせないでいてくれたから………。
  ………それとも私自分に都合の良いように思ってるだけ?。
  本当は怒ってる?。こうやってオスカーを追いかけてる事……。
  私…………」





 その時、坂を昇りきったリルヴェ−ルの目前に巨大な傘を広げたように樹が広がり
その根元に寄り掛かる、暗い闇にも潰されない真っ赤な炎が見えた。

 「………………私、……もう一度幸せになる為の努力を始めてもいい?」

 望んだ人が目の前にいる。向こうはまだこちらに気がついてはいない。
10m程離れた場所で足を止めると、息を整えてゆっくりとその影に近付いて行った。


 ドクン……………ドクン…………ドクン!!


 ガサッ


 草を踏む足音に誰かが側にいる事に気付いたオスカーは、腰をあげて立ち上がり振り返った。
そこには…………。





 「……お嬢ちゃん……………」
 「オスカー……」
 「どうして俺がここにいると………?」
 「お父さんに占ってもらったの……」
 「……そうか」

オスカーは黙って出てきた事でばつが悪そうにリルヴェ−ルの顔から視線を外した。

 「……酷いよオスカー」
 「…お嬢ちゃん……、黙って出てきた事は…………」
 「それもだけど、約束してくれたじゃない。一緒に居てくれるって……」
 「お嬢ちゃん………」
 「クリフトの葬式の後、私と一緒に居てくれるって言ってくれたのに
  どうして私から離れて行くの!?」
 「もうお嬢ちゃんは独りじゃないだろう?。クラヴィス様もアンジェリーク様もザイオンもいる。
  俺が側についていなくても独りじゃなくなった…」
 「お父さんもお母さんも関係ないよ!!。オスカーが側に居てくれなきゃ!!」
 「…お嬢ちゃん………!」
 「一緒に居てよオスカー……。手を伸ばして触れるくらい……。
  ずっとじゃなくてもいい……。でも今は側に居て」
 「お嬢ちゃん、俺は………」
 「それとも黙って出て行っちゃう程、私の事嫌いなの?」
 「そんな事!!。お嬢ちゃんが嫌いで出て行った訳じゃない」
 「じゃぁどうして?。…………まだ我慢しなくちゃいけないの?。
  今は私もオスカーも同じ時間の中にいるのに……」
 「……………リルヴェ−ル………」

 オスカーは泣き出したリルヴェ−ルを見つめながら、遠い昔を思い出していた。
まだリルヴェ−ルが幼い頃、こんな風に”一緒に居たい”と泣き出した彼女を
なんとか泣き止ませるのに大変な思いをした事を……。
打算も何もない、純真無垢な心で求められたリルヴェ−ルの想いがその頃は嬉しかった。
何も知らない幼さゆえに、そのままの自分を求めてくるリルヴェ−ルが
更に遠い昔のグレイシャと共に居た頃のようだった。
 彼女と別れたのは確かに自分も寂しかった。でもその時はただの感傷で気持ちの整理をつけたが
今また、彼女と別れて同じような……もしくはその時以上の寂しさをどう整理するか
悩んでいたばかりだった。

 「…………そんな風に泣かれるとどうしていいか解らなくなるから嫌だったんだ」
 「嫌?」
 「お嬢ちゃんに別れを告げるのは………。
  しかし、そのままなし崩しになってしまってはいけないような気がした。
  痩せ衰えた野良猫を見つけても、一時の気紛れでしか愛情を与えられないのなら
  立ち止まらない方がいいって事だ」
 「野良猫?。私野良猫なの?」
 「いや、例えは悪かったが……………。
  ずっと一緒にいる事も出来ないのに、お嬢ちゃんの気持ちを変に迷わせてはならないって事さ」
 「ずっと一緒にいられないってどうしてなの!?」
 「……今はまだそんな気はなくても、その内またお嬢ちゃんも恋をして
  幸せにしてくれる相手を見つけなきゃいけないだろう」
 「オスカーじゃダメなの?」
 「え?」
 「私、オスカーに恋をしちゃダメなの!?。それなら一緒に居てもいいんでしょ!」
 「俺がお嬢ちゃんと??」
 「もうお嬢ちゃんじゃないよ!!。昔の小さな子供じゃない。今ならオスカーともつり合うでしょ」
 「………それは無理だ」
 「どうして!!」
 「お嬢ちゃんには遠い昔でも、俺にとっては数年前の話だ。
  小さかったお嬢ちゃんの姿が目を瞑れば頭の中で今のお嬢ちゃんとだぶってしまう」
 「なら、目を瞑らないで!!。今の私だけを見てよ」
 「……無茶を言うな……。目を開けて眠れって言うのか?」
 「その時は………、その時は今の私の夢を見てよ。今の私を…………」
 「無茶苦茶だな……」

 中々自分を受け入れてくれないオスカーの態度に、リルヴェ−ルの顔はだんだんと涙で濡れて
崩れていった。祈り、すがるような眼差しでオスカーを見つめ続けるその瞳も
次から次へと流れる涙でオスカーの姿をなかなかはっきりと捕らえてはくれなかった。

 「……………………フ−−−………」

 オスカーは大きく一つ溜め息を吐いた。それをリルヴェ−ルは我がままを言う自分に
オスカーが呆れ始めてしまっているんじゃないかと不安になったが………、







 「!!!!」

 依然涙で曇る瞳がやっと捕らえたのは、自分に向かって両手を広げる
オスカーの優しい眼差しだった。
 リルヴェ−ルはその腕の中に迷わず飛び込んだ。

 「オスカー!!」
 「結局は俺が甘い態度を取り続けていたのがいけなかったんだな……。
  そんな風に泣かれると………、お嬢ちゃんの涙を見るとどうしていいのか……
  本当に解らなくなってしまうんだ。
   これが他の女性だったり…例えばアンジェリーク様だったりしたら
  何とかして泣き止ませなければって俺は思うだろう。
  ………だがお嬢ちゃんの涙を見ると………」

オスカーはリルヴェ−ルの顔を上に向かせて涙を拭ってやった。

 「どうしていいのか、いつも困り果ててしまう………」
 「……オスカー……。私頑張るから!」
 「何をだ?」
 「一生をかけてもオスカーに私を好きにならせてみせる。私絶対に諦めないから」
 「それは恐いな………。そうだな………そうしてもらおうかな…」
 「うん!」

 オスカーはリルヴェ−ルの額に唇を押し当て、そしてゆっくりと離した。
リルヴェ−ルの涙はまだ止まらなかったが、その顔は悲しみで崩れてはいなかった。
オスカーが好きな…、リルヴェ−ルを心に思い浮かべる時には必ず浮かぶ最高の笑顔……。
背中を包む腕に更にきつく力を入れると、それに答えるように自分の背中にまわる
リルヴェ−ルの腕にも力が入った。







 満点の星空から隠れるように大きな樹の下で抱き合う二人の影は暫くの間、離れる事はなかった。




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