OneDays



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 マルセルは宮殿の中を慌てた様子で歩いていた。
辺りをキョロキョロと見渡しながら通路の奥や各部屋の中を覗きながら歩いてゆく。
道すがら挨拶を交わす女官達にも上の空だ。


 「どーしよぅ…。てっきり後ろを着いて来てくれるのもだと思ってたのに…。
  どこ行っちゃったのかな?セイランさん…」


 どうやらセイランと共に女王陛下に挨拶に行く途中だったらしいのだが、気がついて振り返ってみれば そこに居るはずの相手が居なかったので、慌てて引き返して探しているという所らしかった。


 「セイランさーん。どこですかー?迷子になっちゃったのかな?」


 この広い宮殿の中を間違わずに歩くのはかなりの日にちを要するものだった。
マルセルも最初は何度となく迷っては走り回っていた過去がある。
統一されたインテリア。まっすぐな通路。まるで迷路といってもおかしくはない。


 「セイランさーん」
 「ここです。マルセル様」


 返って来た返事にホッと安堵の息を漏らしてマルセルは声のした部屋へと向かった。 ガランと広い部屋。壁には幾枚もの肖像画が飾られていた。その一枚一枚が薄いベールで覆われている。 その中で一枚だけベールが開いている肖像画の前でセイランは佇んでいた。
じっと絵に目を奪われながら…。


 「よかったー。探しちゃいましたよセイランさん」
 「あぁ。すいませんでした。目の端に飛び込んだこの絵に興味を惹かれてしまいましてね」
 「この絵?」


そう言われて目前の肖像画をマルセルも見上げた。


 「女王陛下…」
 「でも今の陛下とは少し違いますよね。何代か前の女王陛下でしょうね」
 「この方は先代の女王陛下ですよ」


思い出すようにマルセルはポツリと呟いた。その言葉にセイランは彼の方を見る。


 「先代の?ではマルセル様はお会いになった事があるんですか?」
 「はい。でも2回しか会ったことはないんです。
  でもその内の1回はホログラムみたいなものだったからちゃんとお会いできたのは1回だけかな…」
 「へぇ。今の陛下からは想像も出来ないですね。そういったしきたりでもあったんですか?」
 「そうじゃないけど、先代の陛下は大変お忙しい方だったし宇宙も大変な時だったから…」
 「あぁ、なるほど」


 納得したように頷いてセイランは再び絵画に目を向ける。
作者の腕もさる事ながら被写体から溢れ出るオーラがしっかりと絵に込められていてセイランは感嘆した。
できるなら自分の部屋に持ち帰りたいくらいだった。


 「さ、行きましょうセイランさん。女王陛下を待たせてしまってはロザリアに怒られちゃいますよ」


 後ろ髪を惹かれるようにセイランはその部屋を後にする。途中見えなくなるまで何度も振り返りながら…。









 用事を終えて聖獣の聖地に戻ってきたセイランは、自分の執務室へと向かう途中で聞こえてきた楽しげな会話のする方へ と進路を変えた。 そこでは小さなティーパーティーが開かれていて、ヴィクトール、エルンスト、ティムカが揃って座っていた。 セイランに一番に気がついたのはお茶を注いでいたヴィクトールの妻のアンジェリーク。


 「お帰りなさい、セイラン。よかったらあなたもいかが?」
 「ありがとう。是非ご馳走させてください。もう、喉がからからですよ」
 「神鳥の宇宙ではどうだった?」
 「別に。いつも通りですよ」


 空いた席に座って、彼女の入れてくれたお茶を手にする。 いれたての紅茶の香が鼻を掠め柄にもなく緊張していた体からほっと力が抜けていくのがわかった。 一口紅茶を口に含んでカップをソーサーに戻す。


 「そういえば、大変興味深いものを見てきたよ」
 「なんですか?セイランさん」
 「宮殿の奥に飾られていた、神鳥の宇宙の先代女王陛下の肖像画」
 「!?」


それを聞いたアンジェリークはポットの蓋を指から滑らせた。がしゃん、という大きな音で皆が一斉に振り向く。


 「あ、ごめんなさい…。そ、それで?」
 「顔はベールで半分隠れていたけど美しい人だってのはよく分かったね。
  できれば持ち帰りたいほどでしたよ」
 「それは流石に無理だろう」
 「だから「できれば」の話ですよ。あのベールの下の素顔を見てみたいけど…」
 「それは無理でしょうね。現存するデータに神鳥の宇宙の先代女王陛下の御素顔はありませんから」
 「そうなんですか?」


エルンストの言葉にティムカが聞き返した。


 「先代に限らず神鳥の宇宙の歴代女王陛下は皆ベールで顔を覆っていましたから」
 「へぇ…。ナンセンスだね。美しいものを無粋な布で隠してしまうのは」
 「神聖なものを無闇に晒すのはどうかと思いますが」
 「なるほど。そーいう考えか」


 エルンストの一理ある答えにセイランは頷いてカップの紅茶に口をつけた。
目の前のクッキーに手を伸ばした所で、ある事を思い出してヴィクトールの方を向く。


 「…そーいえばあなたの奥さん、前は聖地で働いていたんでしたよね」
 「そういえば」


その言葉でエルンストも思い出したように彼女を見る。


 「ルヴァ様から伺ったのですが先代女王陛下の宮殿で女官をされていたとか」
 「ま…、まぁ、ルヴァったらそんな事言ったの?」
 「ヴィクトールさんは何か知ってます?」
 「いや。昔の話は特に何も」
 「私の話はもういいじゃないの。ほらクッキーをどうぞ?」


話を変えようとアンジェリークはクッキーをセイランに差し出したが、そんな事では彼の気は変わらない。
食い入るように彼女を見据えた。


 「僕はあの被写体に凄く興味をもったんだ。モデルになってもらうのはもう不可能だし
  だったら、あのベールの下の素顔だけでもどんなだったのか知りたい」
 「被写体って…先代女王陛下に向かってそのような言葉はいかがと思いますけど」
 「いいじゃないか。本人がいるわけじゃないんだから」


セイランの言葉にアンジェリークは冷や汗モノだった。彼の興味はなかなか他に逸れてくれない。


 「エルンスト。さっきからやけに言葉に刺があるね。もしかして君…」
 「なっ!何を言い出すんですか急に」
 「女王陛下に惚れてたのかい?」


その台詞にその場にいる全員、取り分け当のエルンストが激しく動揺しカップを手から滑らせて テーブルクロスに琥珀色の模様が広がった。


 「あっ…あなたはなんて事を言うんですか!?よりによって女王陛下に向かってそんな…!!」
 「そのうろたえ振りは図星だね。
  そーいや君は王立研究院にいた頃と先代陛下が即位されていた頃と被るんじゃないのかい?」
 「…っ確かに、先代の女王陛下は私がまだ王立研究院に入ったばかりの頃からいらっしゃいましたけど」


 言い合う二人の間でヴィクトールは転がるカップを手に取り、ティムカはこぼれた紅茶を布巾で拭き取っている。 いつも冷静なエルンストの動揺に口を挟む事も忘れて二人のやり取りを眺めていた。


 「女王陛下はそんな…恐れ多くも惚れるとかどうとか、そんな感情の対象ではありませんでした!」
 「へぇ。でも好きだったんだろ?」
 「っ女王陛下は私の憧れの存在でした!それは私だけに限らずあの頃の研究員全員に言えた事です。
  微力でも陛下のお力になれればと日々努力を惜しまず……!!」


 そこまで心情をぶちまけてしまってからエルンストははたと観客の視線に気がついた。 途端に顔を真っ赤にし(まるで眼鏡まで曇りそうなほど)席を立つと気を取り直すように 眼鏡をかけ直して身なりを整える。


 「お話になりませんね。私はこれで失礼します。
  アンジェリーク、美味しいお茶を有難うございました」


 エルンストはアンジェリークに一礼をするとそのまま自分の執務室にまっすぐ向かって帰っていった。
一度も振り返らず、足も止めなかったが耳の端が微かに赤いのが後姿からでも分かるほどで、 その場の3人の同僚は初めて見た彼の一面に笑っていいやら気の毒やらで…。


 「あ〜ぁ、せっかくの情報源だったのに」
 「セイランさんでしょう?あそこまで追い詰めて…。何だか可哀相です」
 「本当にそう思ってるのかい?ティムカ」
 「そ…それは…」


 本音を探るような鋭いセイランの視線にティムカはたじろいで視線を逸らした。 どうやら上手い具合に話の論点がずれてくれたので、 アンジェリークはほっと安心してその場を去ろうとした所を後ろから呼び止められる。


 「まだ、話は終わってないよ。それであなたは先代陛下の素顔を知っているの?」
 「あ、まだ覚えてたのね…」
 「当然だね。人物画にあんなに刺激されたのは初めてだったからね。
  しかも君も随分と動揺しているようだし、何か知っているんでしょう?」
 「私は何も」
 「ウソだ」


とうとうセイランは席を立ってアンジェリークに詰め寄った。確信を持って彼女に問いただす。


 「さぁ、知っている事を洗いざらい教えてもらえないかな」
 「知ってるも何も……」


(私がその本人なんだもの)とは言えず、しかもどんどん追い詰められるものだから、 いつものような上手い言い訳も出てこない。視線がふら付いて泳ぐ仕草でセイランは更に確信を強めた。


 「もうその位にしてやってもらえないか…」
 「ヴィクトール」
 「女王陛下に関する事は非常にデリケートな事柄なんだ。
  知っていたとしても彼女がそう口を滑らせるわけにもいかんだろう」


 詰め寄るセイランとアンジェリークの間に割って入るようにヴィクトールが妻を引き寄せた。
彼の背中でアンジェリークはほっと胸を撫で下ろす。
彼ならセイランの追及も跳ね除けるだろう。セイランもそれを知っている。
仕方なく諦めたように溜息をついてテーブルに戻った。


 「じゃぁ、今日はこれで終わりにするけど僕は諦めないからね」
 「しつこいな、お前も」
 「あれだけのモデルはそうそう出会えないからね。
  出会えないとなると余計に気になるものなんだよ。彼女の素顔がね…」


 セイランはそう言い残してカップの紅茶を飲み干すと執務室に向かって歩いていった。
ティムカとヴィクトールは顔を見合わせて溜息をつく。


 「ほんと。彼の芸術への関心には脱帽ですね」
 「まったくだ…。気難しい芸術家は健在だな…。アンジェリーク」
 「分かってる。暫く彼にも宮殿にも近寄らないわ」
 「…そうしてくれ。悪いな」
 「貴方が謝る事じゃないわ。それにあそこまで熱心に口説かれると正直悪い気はしないし」


その言葉にティムカは目をぱちくりさせた。


 「セイランさんのあれはそーいう意味だったのですか?」
 「!なんでもない。言い方を間違えたわ。あはは……」


 から笑いをしてアンジェリークはテーブルの上を片付け始めた。
ヴィクトールとティムカを執務に戻して1人でカップをトレーに乗せる。
気疲れしたような溜息を吐いて、アンジェリークは椅子に腰掛けた。


 「はぁ…危ない危ない。それにしても、も〜!一体誰なの?ベールを開け放してるのは。
  無用心だわ。今度ジュリアスに言っておかなくっちゃ…」


 どっと疲れに襲われたアンジェリークは近くを通りかかった女官に後片付けの続きを頼んでそのまま私邸に戻っていった。














〜おまけ〜


 「陛下〜。どちらにおいでですの?陛下!」
 「ここよ〜ロザリア。ここ、ここ」
 「まぁ、こんな所にいらっしゃったのですか。…またご覧になっていたんですの?」
 「えぇ。どれだけ見ていても飽きないの。
  この絵を見るたびに「私も頑張らなくっちゃ」って思うのよ」
 「それはよろしいですが、見終わった後はちゃんとベールを掛けてくださいな。
  先代陛下の肖像画ですのよ?絵が傷んでしまいますわ」
 「はーい。気をつけまーす」











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突発的に書いたヴィク前2。
もう久しぶり過ぎて皆の口調を忘れましたよ(爆)新キャラはプレイしてないから口調分からないし。
フランシスあたりもお茶会には参加してそうだったのになぁ…。
とほほ;





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