独り |
KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「王立派遣軍から参りましたヴィクトールといいます」 「‥‥‥‥‥‥‥‥」 自分よりも幾つか年上の額に傷のある男性は、宇宙ステーションについたリムジンの前に立ち アンジェリークにそう挨拶をして頭を深く下げた。 「貴殿の身辺の警備を女王陛下より御命令を頂き、私が任命されました。 下界に降りられてから、数カ月かの間は護衛として御同行させて頂きます。 よろしくお願いいたします」 「‥‥‥‥はぁ‥‥‥」 そんな話の聞いていなかったアンジェリークはつい、気の抜けた返事をしてしまった。 こんな風に自分の行く先々で護衛がつくのは、女王時代に嫌という程経験し、慣れてきたが それが女王を退位した後にまでついてくるとは、考えてもいなかった。 「あの‥‥‥」 「ヴィクトールと御呼びください」 「‥‥‥‥。ヴィクトール、私の事は何か聞いていますか?」 「いいえ、詳しい事は何も。聖地にいらっしゃった方が下界に降りられる時に 護衛がつくのはそう珍しい事ではありませんので、何もお聞きしていませんが」 「そう。ならいいんです」 アンジェリークはそうにこやかに笑いかけた。 「でわ、これからよろしくお願いします」 ヴィクトールの案内についてアンジェリークが歩き出すとその後ろを、荷物を抱えた運転手が その後をついて行った。 黒いスーツで身を包んだ運転手と、見るからに格の高そうな軍人、2人に囲まれて 宇宙ステーションの中を歩くアンジェリークの姿は、回りの一般客の目を引いた。 それでなくても女王としての、風格というか威厳というか、隠せない程の気品が溢れる アンジェリークだけでも注目を集めそうだったが‥‥‥‥。
旅客機を乗り継いで無事到着した星は、主星から少し離れた所にあるリゾート地。 その場所を選んだのはディアだった。聖地を離れてまず、彼女が安らぐのに最適な場所を ディアは一生懸命に探し出していた。彼女につく護衛にも自ら面談をし、 身寄りのないアンジェリークの身辺を姑くの間でも、任せられる信頼できる人物を選びだし 彼女が”女王”であった事は告げずに、それでいて彼女が聖地でのVIPであった事を告げ 厳重な護衛を頼んだのである。 ホテルに到着し、ヴィクトールは云われていた名前でチェックインを済ませる。 数日前にすでにチェックインを済ましていたヴィクトールは、アンジェリークの部屋のキーを フロントから預かるとアンジェリークを連れて、最上階にあるその部屋へと案内した。 辿り着いてみてアンジェリークは驚きを隠せなかった。 どう考えても独りでは広すぎる、また豪華過ぎる部屋に通され、少々げんなりとした気分が沸き上がり ”仕方ないか”とそれを瞬時に諦めた。 荷物を持ってきていたベルボーイにヴィクトールはチップを渡し、下に返すと 部屋の中を眺めているアンジェリークに目をやる。 窓を少し開けて部屋の空気を入れ替えて、彼女に声をかけた。 「今日はお疲れでしょうから、これでお休みください。 私の部屋はちょうどここの一階下になります。内線電話はこちらに。私の部屋の番号も書いてありますので 何所かお出かけになる際は一言御声がけをお願いいたします。 何か御入用の時は遠慮なくホテルの方に声をかけて下さい。では、私はこれで失礼いたします」 そう言って先程のベルボーイよりも礼儀正しく御辞儀をすると、ヴィクトールは部屋を出て行き 広過ぎる部屋にアンジェリークは1人になった。 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」 上着を椅子にかけてさっきヴィクトールが開けて行った窓からベランダに出ると、アンジェリークは その目前に広がる素晴らしい程の絶景に目を奪われていた。 まっすぐに広がる地平線、赤い夕日が今にもその彼方に沈みそうで、空は対照的な闇色と赤が 解け合っている。海は水が見えない程澄み渡っていて、白い砂浜は僅かな夕日を浴びて光っているようだった。 アンジェリークは幻想的なその景色から目を離すと、部屋の中へと戻りベッドの中へと 疲れた体を沈めた。 夕食もとらないまま、その日は深い眠りについていた。 |
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■NEXT 余談ですが‥‥ヴィクトールの台詞「何所かお出かけになる際は一言御声がけをお願いいたします。」 この『お声がけをお願いいたします。』何所かで聞いたフレーズ‥‥‥。 どこだろう?。デパートの中の店内放送?‥‥‥‥‥‥‥‥違う‥‥どこで‥‥。 ・ ・ ・ ・ あああ!!!。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ちり紙交換だ‥‥‥‥‥‥‥‥。 しまった。ヴィクトールに変な事させてしまった。 『熊○の○○商店のちり紙交換で〜〜ございます。 古新聞古雑誌〜ございま〜せんかっ。 ございました〜ら〜多少に関わらずっお声がけお願い〜いたしますっ。………エンドレス。』 あああ‥‥なんて事。 |
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