雪が降った夜



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 コンコン……。

 「?」

 1日の勉強も終わり夕食もとってくつろいでいた夜遅い時間、不意にノックされた戸に
アンジェリークは視線を向けた。

 「誰かしら?………。こんな時間に…」

 ”もしかしてクラヴィス様だったりして…”などと予想を立てながらアンジェリークは返事をして
戸を開けた。……するとそこには夜の闇のようなクラヴィスの黒髪とは正反対に輝かしいばかりの、
自分よりも濃い金の髪を持った守護聖、ジュリアスの姿があった。

 「ジュリアス様!?。いったいどうされたんですか?、 こんな時間に………」
 「うむ………。その少しそなたと話がしたくてきたのだが……」
 「話?。…………ディアじゃなくて私とですか?」

 アンジェリークはとにかく廊下で立ち話もなんだからと、ジュリアスを部屋の中に招き入れた。
部屋の中央にある丸テーブルに向かい合って座り、ジュリアスの言葉を待った。

 「…(何かしらこんな時間に……。もしかして!、私何かヘマしたのかしら?)」
 「このような時間にすまぬとは思ったのだが………その……
  話とは他でもない、ディアの事なのだが………」
 「ああ!なんだ。お小言じゃなかったんですね?。よかった…………」

 ジュリアスはいつもなら今のようなアンジェリークの言葉には注意をしていたが
今はそれを口に出さずに押しとどめた。

 「ディアに最近何か変わった事はなかったか?」
 「変わった事?」
 「気のせいならよいのだが…、最近どことなく落ち込んでいるように見えるのだ」
 「………私はそう感じないけど……」
 「…そなたが何も感じないのなら私が気にしすぎなのかもしれん…」
 「……んんーー、ジュリアス様それはいつ頃感じたんですか?」
 「いつという訳ではないが……、数日前に聖地の事で質問をされた頃から……どこか……」
 「質問?。それってどんなものか聞いてもよろしいですか?」
 「聖地の天気についてだ。聖地は女王陛下のサクリアによって天候も落ち着いている。
  雨や雪といった類いの変化はあまりみられないのか?…と…………」
 「雪!!?」

アンジェリークはその言葉を聞いて咄嗟にカレンダーに目を向けた。

 「??」
 「ははぁ〜なる程………。分りましたジュリアス様。ディアの様子が変な原因が」
 「なんだと?。それは一体……」
 「ホームシックですよ。下界ではもうすぐクリスマスですもの。
  ………そうか、もうそんな時期だったのね……」
 「”クリスマス”?。……………それが一体ホームシックとどういった関連があるのだ?」
 「クリスマスっていうのは、私達の惑星にある大きな行事です。
  神様が生まれた日とされていて、その日を皆で祝うんです。
  恋人同士や仲間達と一緒に過ごす人もいますけど、大抵は家族でその日を祝うんです」
 「………家族……」
 「家族と離れたクリスマスは、きっとディアは初めてなんだと思います。
  それでホームシックにかかってるんじゃないかしら…」
 「………………そうか…。
  すまなかった、アンジェリーク。こんな夜も遅い時間に…」
 「いいえ。またディアの事で何かあったら聞いて下さいね?」
 「……うむ。では失礼する。(////////////////)」

 ジュリアスは用がすむと早々にアンジェリークの部屋を後にした。
ここ数日間の気掛かりはやはり思い過ごしではなかった事を確信し、その理由も突き止めた。
後はディアを元気づける事だけだったが、そこで一つ問題が生じた。

 わずか5歳で守護聖となり、聖地に訪れたジュリアス自身は”家族”というものを
漠然としたイメージでしか持っていなかった。
 手元に家族の写真はあっても平面的なイメージでしかもう母も父も思い出せない。
逆に家族に対する記憶が不確かな分、それに悲しむ事もなかったのだが
家族を懐かしみ落ち込んでいるディアに、どう接すればいいのか思い当たらなかった。

 「………さて…、どうしたものか………」

ジュリアスは私邸に戻りディアを元気づける為の方法をベッドの中で考えながら眠りについた。

 次の日寝不足な頭を抱えながら執務にでたジュリアスは、執務の合間に下界の資料を呼びそろえた。
各惑星、各地の”クリスマス”という行事について…。
どれもこれも日にちや過ごし方などに違いはあったが、変わらない事があった。
それはどれも、家族で過ごし、メニューは違えども食事を楽しみ、
思い思いのプレゼントを交換しあうといった3点。
この”クリスマス”というものにはどの地のデータにも雪…寒さの中で
というイメージが付きまとっていたが、聖地ではそれは諦めざるを得なかった。

 「雪……か」

ジュリアスはクリスマスの資料をまとめて横にやり、執務を再開した。








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 「ディア!。これから何所かへ出かけるの?」
 「アンジェリーク………」

 土の曜日の夕方、身支度を整えて女王候補生寮の玄関ホールで立ちすくんでいたディアに
アンジェリークは声をかけた。ジュリアスに言われるまで気がつかなかったが
確かにここ最近のディアはどことなく元気がない様子だった。
 回りに対し常に気を使い笑顔を絶やさないディアの笑顔が、どことなく疲れているようにも見れる。
その事に気付いたジュリアスにアンジェリークは、ディアに対する情の深さを感じずには
いられなかった。

 「ジュリアス様に御夕食を誘われたのだけど……何だか気が進まなくって……。
  お断りしたらやっぱり失礼よね…。せっかくお誘いして下さったんだもの…」
 「ダメよ!!断ったりしちゃ!」
 「……そうよね……」
 「きっと帰って来る時にはそんな気分なくなるくらい楽しんで来れるわよ。
  ほら…!、お迎えの馬車も来たしいってらっしゃい」

 アンジェリークはなかなか足の進まないディアの背中を押して馬車に乗り込ませた。
ディアを乗せたジュリアスの使いの馬車は寮を後にしていった。








◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆





 「こんばんわ、ジュリアス様。今日はお誘い下さってありがとうございます」
 「ああ。よく来てくれたな……ディア」

 ジュリアスに先を案内されてディアはジュリアスの私邸を奥に進んでいった。
食卓に目を向けたディアはふと小さなデジャヴを感じた。

 「…(……??、なにかしら…。何か今感じたんだけど……)………」
 「どうかしたのか?」
 「…!いいえ、何でもありません」

 椅子を引かれてディアは腰をかけ、その向側にジュリアスは席をとった。
手をのばせば指先が触れそうな距離の机に見覚えのある料理が並んでいた。
 七面鳥のローストにクランベリーソースがかかったもの、
マッシュドポテトににんじんとグリンピースを湯がいてバターでソテーしたもの、
ポテトのスープに、パンに、そしてワイン。

 「………なんだか、クリスマスの食卓みたいですわね…」
 「…!!。本当にそう思うか?」
 「…?ええ…」
 「…そうか……。そなたの口にあえばよいのだが……」
 「一体どうされたんですか?、ジュリアス様。
  お誘いを頂いたのは嬉しかったですけど、このメニュー……まるで」
 「調べたのだ、色々と。………その、私はそういった事は知らなかったのだが
  アンジェリークに聞いた所、下界では”クリスマス”というものがあるらしいな…」
 「……アンジェリークに?」
 「ああ。……そなたがどことなく元気がないように思えたのだ……。
  …こんな事では何の慰めにもならぬと思うが……」
 「…………ジュリアス様(//////////)。そんなことないですわ。とても嬉しいです」
 「……ディア」
 「それにとても美味しそうですわ…」

 ジュリアスは何所か照れくさそうな笑顔を向けると、ディアはいつもの花のような笑顔を取り戻した。
二人は会話をしながら食事を楽しみ、食後に出されたフルーツケーキとシャンパンを平らげると
ジュリアスはディアを誘い、バルコニーへと場を移した。

 「…少々風が冷たかったな…」
 「いいえ。ちょうどいいですわ…。
  ワインを少し頂きすぎてしまってなんだか少し暑いくらいですもの。
  風が気持ちいいです……」

 ディアは木々の葉を揺らしまるで音楽を奏でているような夜の風を頬に受けながら
目を閉じて酔いを醒ましていた。

 「………ディア……、そなたに贈り物があるのだが……。受け取ってくれるか?」
 「ええ?。これ以上何かして下さるのですか?」
 「ああ。……本当ならば女王陛下の意志なくこんな事をするのは許されないのだが……」

ジュリアスは右手をふっと空に向けてあげた。

 「もしお叱りを受けたら、ワインを飲み過ぎて酔っていたとでも言っておこう…」

 ジュリアスの右手の先をつられるように見上げたディアの目に、白いものがちらほらと舞い降りてきた。
心地よい程の風の中で、その風に踊らされる事もなく舞い降りて来る無数の白い小さなもの。
まるで雪が降って来るような光景にディアは感動しその小さな白いものに手を出したが
ディアの手に落ちるものはなく、白いものは消えた。小さく白く光る光の粒………。
ジュリアスのサクリアが降らせた光の雪………。

 「ジュリアス様!!」
 「手元にある資料にはどれも”クリスマス”には雪が必要不可欠なものだとあったのでな。
  しかし、私は一守護聖で聖地の天候にまで及ぶ力など持ち合わせてはいない。
  ……せめてこれが精一杯の……そなたに贈る雪だ………」

 次から次へと光の雪はディアに舞い降りた。その光に包まれるようなディアの姿と
その光の雪でさえかすんでしまうようなディアの笑顔……。
その笑顔を見れただけでも、ジュリアスはここまでしたかいがあったと満足していた…。

 「……ありがとうございますジュリアス様………。
  こんなに素敵なプレゼントを頂いたのは初めてですわ……」
 「……そうか……」
 「今日がクリスマスなら、わたくしも何かプレゼントをしなければなりませんわね…」
 「…ディア……私はそなたの笑顔が見れただけで………」

 ジュリアスの言葉は最後までディアに伝えられる事はなかった。
ディアの……柔らかな髪の色と同じ色で飾られた唇がジュリアスの言葉を塞いだ。

 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 「すみません。何も用意してこなかったものですから、こんな事しか出来なくて…。
  でも今の私の精一杯の感謝の気持ちですわ……」
 「(////////////////////////////////////////////////)」
 「……………ジュリアス様?」

 ディアの思わぬプレゼントにジュリアスは硬直していた。
耳まで真っ赤になったジュリアスの顔を更に照らし出すように光の雪は降り続けた。

光の雪が降った夜。その夜は最高のプレゼントを持ったサンタクロースが二人の所に訪れた夜。






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あまたまごキリ番「3500」を申告してくれたmikiさんのリクで
「候補生時代のジュリディア希望。」
そして「 二人のキスシーンほしいです。ディアからの。」こんな御要望もありました。
どうでしょう?。雰囲気出てる?。
ジュリディアなんだか久し振り。前鋼もいいけど、やっぱジュリアスもいいよね。
ディアに押されるジュリアスがかわいいのよね。






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