一週間目の事実



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




>>月の曜日<<
  「おはようございます。ジュリアス」
  「ああ。おはよう」

  それは月の曜日から始まった。光の守護聖に使える使用人の全てが気付かなかった
 ジュリアスの異変を逸早く感じたのはディアだった。

  「あら?。どうかなさいました?」
  「何がだ」
  「なんだか声の様子がいつもと違います。風邪でもひきました?」
  「いや。別にこれといって変わりはないが‥」
  「‥‥そう。なら‥いいんですけど‥」




>>火の曜日<<
  次の朝、ジュリアスはのどに変な違和感を感じた。

  「ジュリアス、今朝も声が変ですけれど‥‥」
  「‥うむ。痛いという訳ではないが何か妙な感じがする。
   まあ、他はなんともないからたいした事はないだろう」
  「そうですか‥‥」

  ディアは大事をとって休んで欲しかったが、自覚症状もないのに
 仕事を休んでといって休むような性格ではないのを一番良く解っていた。
 とりあえず様子を見る事に‥‥。




>>水の曜日<<
  その日のジュリアスの目覚めは最悪だった。軽い頭痛にのどの違和感は
 痛みとなって悪化。何かを飲み込むごとに、針を刺したような痛みが走る。
 この症状は完璧に”風邪”である。

  「やっぱり、体調を崩してらしたんですね‥‥。
   今日は大事をとって休んで下さいな‥‥」
  「のどの痛みだけなら仕事に支障は出ぬ。1日でも休めば仕事が滞ってしまう」
  「しかし‥」
  「大丈夫だ。心配する程の事ではない」
  「‥‥‥‥‥‥‥」




>>木の曜日:午前<<
  「37度5分。‥‥少し熱が出てしまいましたわね。今日は休んで下さい」
  「それくらいであれば、わざわざ仕事を休む程のモノではない。
   今日中に目を通さねばならぬ書類もあるし‥‥」
  「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
  「?。どうしたディア」

  ジュリアスはびくっとした。そこにあったのは今まで何度も見た優しい笑みではなく
 背中に冷たいものが走るような微笑みが自分に向けられていた。

  「わかりました。あなたの好きに為さればよろしいですわ。
   そのかわり、あなたがわたくしの言う事に少しも耳を貸して下さらないのなら
   わたくしはあなたの側にいる必要もありませんから」
  「‥‥‥ど−いう意味だ?」
  「お好きなように解釈為さって結構です。さぁ、今日はどうなさいますか?」

  ‥‥無言の脅迫。はっきりと表には出さないが相当怒っているらしい。
 ジュリアスは彼女が怒っているのは解っても、それが何故なのかは解らなかった。
  ディアにしてみれば、月の曜日からジュリアスの体調の変化に気付いていたのに
 当のジュリアスは、話を最後まで聞きもせず、ここまで悪化させたのは
 仕事を優先させたジュリアスなのだ。
 しかも一度休んで欲しいと頼んだのにも関わらずこの有り様。

  「‥‥わかった。大事をとって今日は一日ゆっくり休む事にしよう」

  ディアはいつもの笑みを顔に戻すと、ジュリアスをベッドに寝かせ部屋を後にした。
 休むと言った以上ジュリアスはベッドから出る気はなかったが
 急に空いた時間を弄んでいた。




>>木の曜日:午後<<
  「ジュリアス、起きてます?」
  「あぁ、なんだ」
  「オスカーがいらしてるんですけど、どうなさいます?」
  「わかった。通してくれ」


 *****************************


  「ジュリアス様、失礼します」
  「オスカーどうした。何か急用か?」
  「いえ。体調を崩されて休まれていると聞きましたので‥‥」
  「そうか、多少熱があるだけなんだが、大事をとって休んだだけだ」
  「そうでしたか‥‥。たいした事がなくて何よりです。
   きっと、今までの疲れがまとめて出たのでしょう。
   今日はゆっくりおやすみください。では、これで失礼します」
  「ちょっと待てオスカー。一つ頼まれてくれぬか?
   私の執務室の机の上に、今日中に処理しなければならない書類があるのだが
   持って来てくれぬか?」
  「‥ええ。それはかまいませんが。お体の方はよろしいんですか?」
  「熱といっても、ほんの微熱程しかないのだ。頼まれてくれるか?」
  「わかりました」
  「くれぐれもディアには内密に頼む」
  「?はっ」




>>金の曜日:朝<<
  「38度9分‥‥。だいぶ熱が上がってますよ。昨日はちゃんと休んでいただけたんですか?」
  「‥‥ああ‥‥。‥‥‥なんだか寒いな」
  「では、何か掛けるものを持って来ますわ。
   40度近くもあるんですもの。今日こそはちゃんと休まれて下さいね」

  部屋を出るとオスカーがジュリアスの様子を見にきていた。

  「ディア。ジュリアス様のご容体は‥?」
  「それが、あんまり良くないんですの。昨日より熱が出てしまって‥‥。
   今日は会わせられる状態ではありませんわ」
  「そんなにお悪いのか?」
  「ぐっすり寝れば良くなりますわ。オスカー、1つ聞きたい事があるんですけれど‥
   昨日はわざわざ2回もいらして、何の用事だったんです?。」
  「えっと‥‥(ディアには内密に頼む。)
   最初のがお見舞いで‥‥、次のが1日の報告などを簡潔に‥‥すまん。」
  「いいえ、責めてるんじゃないの。
   彼の性格なら、留守にした1日の事ガ気になるのは当然だもの。
   それだけならいいのよ。本当にそれだけなら‥‥‥」




>>金の曜日:深夜<<
  さすがにその日は具合が悪く、1日中寝ていたジュリアスは
 夜中の変な時間に目が覚めてしまった。数時間寝て目が覚める度に
 身体は楽になり、熱もほとんど下がっていた。

  「なんだかのどが乾いたな‥‥」

  ふと身体を起こしベッドを出ようとすると、ディアがベッドの脇に
 寄り掛かるように眠っていた。枕元を見るとさっきまで額にかけられていた
 タオルが落ちていた。まだひんやり冷たい。
  ベッド横にある台に目をやると、洗面器の中の氷が解けかかっていた。

  「‥‥まさか‥‥一晩中私の看病を?」

  ディアの顔にかかった髪をそっと寄せる。疲れの見えるその顔に胸がズキッとする。

  「‥こんな所で寝かせていてはディアも風邪をひいてしまう‥‥」

  ジュリアスは起こさないようにそっとディアを抱き上げると、
 そのままディアのベッドに寝かせた。

  「‥‥‥ん‥」
  「すまぬ。起こしてしまったか」
  「ジュリアス。‥わたくしいつの間に寝てしまって‥」
  「そなたのおかげでだいぶ良くなった。私の事はもうよい。そなたも休む事だ。
   ‥色々心配を掛けてすまぬ‥」
  「本当にそう思って下さってるのなら、早く安心させて下さい」
  「もう大丈夫だ‥‥」

  ジュリアスは感謝の気持ちを込めてディアの額に軽くKISSをした。

  「口にすれば風邪を移してしまうかもしれぬからな‥‥」




>>土の曜日<<
  「ジュリアス!。熱は下がってもまだ休んでいた方が‥‥」
  「たまってしまった書類を月の曜日までに片してしまいたいのだ。具合が悪くなればすぐ戻ってくる」
  「では、もう少し暖かい格好で‥」
  「子供ではないのだぞ。大丈夫だと言っている」
  「子供の方がいく分楽ですわ。素直に言う事を聞きますもの」
  「‥‥ディア‥‥」
  「いってらっしゃいませ。あまり無理をしないで下さいね」
  「‥ディア。身体の事は気をつける。明日はそなたとゆっくり過ごしたいからな‥‥」




>>日の曜日<<
  その日約束通りジュリアスとディアは久しぶりにゆっくりと時を過ごした。
 ディアの異変に気付いたのはその日の夜だった。

  「顔が赤いな‥‥。疲れが出たか。今週は迷惑をかけたからな‥」
  「大丈夫ですわ。これくらいなら一晩眠れば良くなりますわ」
  「そうか‥‥。今夜は早めに休むといい‥」




>>月の曜日<<
  「38度2分。熱が出てしまったな。今日はベッドで大人しくしている事だ」
  「大丈夫ですわ、これくらいなら」
  「だめだ。今日はすぐ帰る。看病の疲れが出たのだ。今日はゆっくり休め‥‥」

  部屋を出てジュリアスは執事を呼びつけた。

  「今日1日ディアを部屋から出すな。ちゃんと眠っているか確かめるのだ」
  「かしこまりました」

  屋敷を出て執務室へ向かう馬車の中でジュリアスは深くため息をつく。

  「ディアが怒ったのはこういう事だったのか。
   確かにあの時の私の態度では、心配を通り越して怒りを感じるのも無理はない」

  ジュリアスが一週間たってやっとわかった真実だった。




■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■END




これは時間としてリモージュの女王試験が終わってから後の話になります。
補佐官職を終えたディアがジュリアスの屋敷で一緒に暮らしている
という前提があって、その生活の中出の出来事‥‥という訳です。
ジュリアスはきっと仕事の為ならいくらでも無茶をしそうだな‥‥と思い
でもディアが一緒だったら、ジュリアスが無茶をしそうになるのをこんな感じで
止めるんじゃないかと。
笑顔の中の怒りというのも、解りづらい分よけい恐怖感が増すんじゃないでしょうか?。






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