クラヴィスの心労



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 「クラヴィス様、ディアの所に行って来ますね」

 それは土の曜日の事。
アンジェリークがディアに会いにいった後、闇の館の使用人がその主人に向けて
恐る恐る口を開いた。

 「クラヴィス様‥‥‥。アンジェリーク様をあのまま行かせてよろしかったのですか?」
 「どういう意味だ‥‥」
 「‥‥‥‥‥‥」








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 アンジェリークが光の館を訪れると、オスカーと遠乗りに向かうジュリアスと会った。

 「こんにちわ。ジュリアス様」
 「!!!!!」
 「?どうかしました?」
 「‥‥‥‥はっ!‥いえ!何でもありません。
  様をつけて私を呼ぶのは止めていただけませんか?。ジュリアス、とだけ‥」
 「いいえ。クラヴィス様にも我慢してもらってるんですもの。
  女王陛下でも候補でもない自分に私が慣れるまで。
  得にジュリアス様、クラヴィス様、ルヴァ様は、候補生だった頃からいらっしゃるんですから」
 「はあ‥‥‥‥‥。‥‥‥あの‥‥」
 「なんですか?」
 「いえ!。何でもありません。失礼いたします」
 「??」

ジュリアスはアンジェリークに一礼をして去っていった。








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 時間を過ぎて館に帰る途中、アンジェリークは同じく珍しく歩いて帰宅途中だった
オスカーとであった。

 「ごきげんよう。オスカー様」
 「ああ。たしか、パーティーでクラヴィス様と一緒だった‥」
 「憶えててくれたんですか?」
 「もちろんです。お美しいレディは特に忘れません。
  それにしても‥‥今日はまた一段とお美しい‥‥‥」
 「クスッ‥。ありがとう。
  クラヴィス様もあなたみたいにストレートにほめてもらえると嬉しいんだけど」
 「あの方が女性をほめる‥なんてあまり想像できませんね」
 「そうね。口数の少ない人だから‥。
  ‥‥と、もうそろそろ帰らないと心配するわ。
  それではオスカー様、また‥」
 「はい。今度お会いした時は、俺に様はいりませんよ。陛下」
 「!!どうして私が??」
 「俺は一度聞いた人の声は、わりかし憶えてる方なんです。
  顔はかくせても、声はかえられませんからね」
 「‥‥‥さすがというか、何というか‥‥」
 「褒め言葉としてもらっておきましょう」
 「でも、他の方の手前、言葉遣いはかえませんから」
 「お送りいたしましょうか?」
 「大丈夫よ。聖地には永いのよ。あなたよりもね」








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 「遅くなりましたクラヴィス様。ただいま戻りました」
 「!!!。アンジェリーク‥その姿で外へ出たのか?」
 「ええ?。何か変ですか?」
 「いや‥。よく似合っている‥‥‥が、今後その服で表には出るな。よいな?」
 「??どうしてですか??」

理由をいわないクラヴィスに対し、アンジェリークは近くにいた使用人に意見を求めた。

 「ねえ、私どこかおかしいかしら?」
 「いっいいいえ!!。とてもよくお似合いです!。‥‥ですが、
  クラヴィス様が‥‥おっしゃりたいのは‥‥その‥‥‥
  似合い過ぎてるのが‥問題ではないかと‥‥」
 「似合い過ぎ???」

 アンジェリークはますます訳が解らなくなった。

 「クラヴィス様?」
 「‥その者のいう通りだ。その服はお前によく似合っている。
  いや、似合い過ぎているのだ。
  ‥‥そのような姿を、他の者に見せてやる事はない」
 「‥ああ‥‥‥はあ。そ−いう事ですか」

 アンジェリークは遠回しなクラヴィスの意図にやっと気がついた。

 「つまり‥‥」

 クラヴィスに近付き、その首に腕を回す。

 「私のこんな姿を他の人に見せたくない‥‥という訳ですか‥‥」
 「‥‥‥‥‥そうだ」
 「フフッ!。でも、お生憎様。
  私はお人形じゃないんで、外に出かける時の服装ぐらい、自分で決めます」
 「‥‥アンジェリーク‥」
 「でも、クラヴィス様になら独占されるのも嬉しいです。
  この服はもう外には着ていきません」

 アンジェリークは、そのままクラヴィスにくちづけをした。
 
 「アンジェリーク。ディアの所に行く途中、もしくは帰る間に誰かに会いはしなかったか?」
 「え?。‥‥え‥‥‥と、ジュリアス様とオスカーに会いました」
 「‥‥あの二人か‥‥」
 「それがね、クラヴィス様。オスカーったら、私の事解ったんです!」
 「‥わかった?」
 「私が女王だったって事に!。それがね、声でわかったんですって!」
 「‥クックッ‥‥。実にあの者らしい‥‥」
 「でしょ?」

 アンジェリークはクルクルと表情を変えて、まるで七色の宝石の様だった。
クラヴィスはその宝石が手元にある事が幸せではあったが、逆に心配でもあった。
彼女の光に引き寄せられるのは、自分だけではないはず。
 以前、この宝石を手放してしまった時、宝石は自らクラヴィスの手の中に
帰って来た。一度失った痛みを知っているからこそ、宝石に触れる手に
自然と力が入る。
 しかしアンジェリークはその手をすり抜けてなお、また戻ってくる。
すり抜けてはまた戻る。それの繰り返し。
まるでクラヴィスの心情を知っているかのように、彼の心を惑わせた。
 クラヴィスはその度に、イライラしたりほっとしたり‥。
心労は前よりも増えたのに、なぜか晴れ晴れしていた。








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 金の髪と紫黒の髪が、白いシーツの上で混ざりあう。
アンジェリークが快感にさえずっている。クラヴィスしか知らない声で‥‥。

 「‥この白い肌も‥‥この細い肩も‥‥‥知っているのは私だけでイイ‥」
 「あ‥まだ‥‥昼間の事、気にしてるんですか‥‥?」
 「不安なのだ。アンジェリーク。‥‥‥お前をこのままここに閉じ込めたい」
 「‥‥人を愛する時は、誰もが‥不安になるんです。
  人の心はうつろうもの。‥‥見る事も‥触る事もできないものを信じるんですもの‥‥‥。
  ‥私も不安でした。‥‥クラヴィス様に愛を打ち明けた時‥‥。
  でも受け入れてくれた。‥‥‥だから、今の私は違う。
  それが、空気であるかのように‥‥側に愛を感じるのは自然な事‥‥‥‥」
 「アンジェリーク‥‥‥」
 
 クラヴィスはアンジェリークと繋がる場所に、力を入れた。
クラヴィスの動くリズムにあわせて、アンジェリークがまた吐息を漏らす。
やがてそれは、二人を頂点へと導いた‥‥‥。





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最期の方ちょっと(かなり)エロチックでしたね。苦手な方すいません、何も表記してなくて。
この”似合い過ぎた服”というのは、イラストも描いて最初はアップしてたんですが
HPお引っ越しの際に何所かに行ってしまいました。
出てきたら再びアップします。かしこ。






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