Saint Night



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 「クリスマスパーティー?」
 「ええ、聖地に暮らす者全てが参加できる大きなもので‥。知らなかったんですか?」

 女王補佐官を引退後、ジュリアスと共に暮らしはじめたディアを訪ねたアンジェリークは
初めて聞く話に驚いていた。

 「クラヴィス様、何も言ってこないわ‥。ディアは出席するの?」
 「ええ。ジュリアスに誘われましたし。」
 「ジュリアス様が知っているって事は、クラヴィス様も知ってるはずよね。
  なんで何も言ってくれないのかしら‥?」
 「‥あまり賑やかな場所がお好きな方ではないですし‥。」
 「‥‥ちょっと用事を思いだしたから、今日はもう帰るわ。ごめんなさい。またね、ディア。」

 そう言うと、いくつになっても少女らしさを失わない学生時代からの友人は、
ディアの返事を待たずに走り去っていった。

 「‥‥ちょっとまずかったかしら‥?」







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その日クラヴィスはいつも通り執務を終え、帰宅した。アンジェリークがいつも通り出迎える。

 「お帰りなさい」

だが、いつも通りのその言葉に何か違和感を感じた。

 「アンジェリーク」
 「はい?」
 「今日、何か変わった事はあったか?」
 「やっぱり解ります? 今日ディアの所に行ってきたんですけど‥
  彼女、ジュリアス様にクリスマスパーティーに誘われたんですって」

クリスマスパーティー!その言葉を聞いてクラヴィスは焦った。

 「なんでも、聖地に暮らす者全員が出席を許されている大きなパーティーみたいですよ。
  クラヴィス様は御存じでしたか?」
 「‥‥ああ‥‥いや‥‥」

 いきなりの質問に、あやふやな答えをしてしまう。
クラヴィスはもちろんパーティーの事を知っていた。だがそういった類いのモノはあまり好きではない。
できる事なら行きたくはないものだった。
強制的なものではないので、アンジェリークには黙っておいた話だった。なぜなら‥‥

 「クラヴィス様。私もそのパーティー行きたいです。連れてって下さいません?』

彼女がこう言いだしてくる事は、目に見えるように解っていたからだ。そして‥‥

 「私は、あ−いったモノはあまり好きでは‥‥」
 「私をつれて皆の前に出るのはお嫌ですか?」
 「‥いや、そういう訳では‥‥」
 「なら、一緒に行きましょう?きっと楽しいですよ♥」

 なかば(ほぼ)強制的に約束させられてしまった‥‥
「惚れた弱み」という言葉があるが、はたから見ればアンジェリークの方が惚れているのだが
それが弱みになっているのはクラヴィスの方だった。
彼女の我がままは、どんなものでさえ断れないのだから‥‥‥。







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 アンジェリークが屋敷の中で大人しくしていれば、耳に入る話ではなかったのだが
それも無理な話か‥‥。‥‥気が変わってはいないだろうか‥。
などど、往生際の悪い考えのクラヴィスに対し、
アンジェリークは、ドレスを新調したり、軽い運動でプロポーションを整えたりと
かなり楽しみにしている様子だった。

 「お待たせしました。クラヴィス様」

 支度を整えておりてきたアンジェリークを見て、考えが180度変わる事となる。
黒いベルベットのタートルロングのワンピース。
前は太もものあたりまで深いスリットが入っており、背中は大胆にあいている。
二の腕のあたりまでの長い手袋に、輝きを抑えた金と銀のブレスレット。
胸元と耳もとには、この日の為に用意したのではないのだが
アンジェリークの為に作らせた紫水晶が光っている。
黒いベルベットがアンジェリークの白い肌と、プラチナブロンドを
いっそう輝かせていた。

 「‥‥‥クラヴィス様。何もおっしゃる事はないんですか?」

嬉々とした目でクラヴィスの言葉を待つアンジェリーク。その言葉ではっと我にかえる。

 「あ‥ああ。とてもよく似合っている。きれいだ‥」

アンジェリークにとっては、その言葉が何よりのプレゼントだった。

 「では、行こうか‥」
 「はい」







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 …お待ちいたしておりました。どうぞお楽しみください。…

 そう言って戸が開かれた。会場にはかなりの人数が集まっており、二人は遅い到着だったようだ。
瞬間、皆の視線が二人に集まった。

 会場にいる誰もが、クラヴィスがこういった事に
あまり積極的ではない事を知っていた為、欠席するであろうと思っていたからだ。

 二つ目の理由は、女性を連れていた事。
アンジェリークがまだ女王だった頃は、常に顔がベールで隠されていた為
素顔を知るものは古くからの友人ディアに
彼女が女王候補生の頃からの守護聖であるジュリアス、クラヴィス、ルヴァの3人。
それに、女王の引き継ぎで直接接した現女王アンジェリークだけだった。
 闇の守護聖様が謎の女性を連れてパーティーに御出席、ともなれば
一般の民ならず、守護聖達までもがざわめいていた。







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 「陛下!」

 そう声を上げた瞬間、しまった、という顔をしながら近付いてきたのは
光の守護聖ジュリアスだった。

 「陛下。何故このようなところに‥」
 「陛下は止めて下さい、ジュリアス様。もう女王ではないのですから」
 「あ‥失礼いたしました。‥しかし‥」
 「私がパーティーにきた事?それともクラヴィス様と一緒だって事?」
 「‥‥あ‥その‥」

 ジュリアスは、一番女王に近い守護聖として、陛下の御力を認め、誰よりも尊敬していた。
長い事守護聖をつとめてきた彼にとって彼女以上の女王はいなかった。
尊敬と緊張から自分が何を聞きたいのかも解らない様子である。

 「ジュリアス様だってディアをお連れになってるじゃありませんか。
  皆、かなり驚いたんじゃなかったんですか?」

 ジュリアスの厳格な性格からして、女王候補生だったディアとつきあう事さえ
かなりの決心がいったのに、女王補佐官とプライベートでつきあうなどとは
夢にも考えられない事であった。どちらかが引退してからつきあう、というのが
最初からディアとの間にあった約束らしく、二人の関係を知る者は
ディアの友人であるアンジェリークだけだった。

 「ディア、ジュリアス様には何もいってないの?」
 「ええ。いつかこんな風に驚く日がくるんじゃないかと思って、内緒にしてましたの」
 「そなた、知っていたのか?」
 「もちろんです。彼女とは候補生の頃から、恋の悩みの相談相手でしたもの。」
 「‥あー、彼女達は、もう女王陛下でも、補佐官でも、候補生でもないのですから
  なんにも気兼ねせず、楽しんでもらえばいいんじゃないでしょうかねぇ‥」

 そう言ってきたのはルヴァだった。いつもと違うジュリアスとクラヴィスが
なんだかおかしいらしく、今にも吹き出しそうであった。

 「!私は別に悪いと言っているのではない。ただ‥その驚いただけであって‥」
 「はいはい。せっかくのパーティーなんだから楽しみましょう」

そういうと、ジュリアスはディアに背中を押されていった。







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 「ルヴァ様!クラヴィス様がお連れになった方を御存じなんですか?
  よかったら紹介していただけませんか?」

そう言ってきたのは、ランディとマルセルにゼフェルだった。

 「‥あー、この方はですね〜。えーと‥‥」
 「初めまして、風の守護聖様。鋼の守護聖様、緑の守護聖様、アンジェリークと申します」
 「アンジェリーク?陛下と同じお名前なんですか?」
 「よくある名前なんだな」
 「ゼフェルッ!失礼だぞ!」
 「僕とは初めましてじゃないですよね」
 「ええ、マルセル様。その節はありがとうございました」
 「マルセル、会った事があるのか?」
 「うん。何日か前にクラヴィス様に花の種をいくつかお屋敷に届けて欲しいって
  頼まれて、お屋敷にお邪魔した時に‥」
 「あれは私がクラヴィス様にお願いしたものだったんです」
 「‥あー、そんな事があったんですか‥」







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 「ル〜ヴァ、そろそろこっちにもその御婦人を紹介してくんないかな」

次に来たのは、オリヴィエとオスカーだった。

 「初めまして、夢の守護聖様に、炎の守護聖様。アンジェリークと申します」
 「‥へえ。陛下と同じ御名前なんて偶然ねぇ‥」
 「それにしても、聖地にこんなに美しいレディが居たとはな。
  いったいどこに隠れていたのか‥‥」
 「オスカーったら、相変わらずなのね。」
 「‥なにか?」
 「いいえ、こっちの話ですわ」

 アンジェリークにとっては年長組の3人以外は、守護聖として聖地にやってきた頃から
知っている顔ぶれで、わが子に近いような感情を持っていた。
久しぶりに見る懐かしい顔に、時間がたつのを忘れる程だった。







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 「‥なんだ、リュミエール」
 「いえ、ここ最近クラヴィス様がどことなく
  楽しそうにされているのには、こんな理由があったんですね」
 「たのしそう?」
 「はい」

 人の中にいるのがどうしても苦手なクラヴィスは、
アンジェリークの手が離れたすきにバルコニーへ来ていた。

 「お二人で何を話されているんですか?」
 「クラヴィス様は進んで御自分の事を話される方ではありませんので
  あなたのような方がいらっしゃるとは、思いもしませんでした」
 「でも、二人でいる時にはとてもおしゃべりになるんですよ」
 「そうなんですか?それは是非見てみたいですね。
  では、そろそろ邪魔者はたいさんいたします。ゆっくり楽しんで下さいね」







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 「アンジェリーク。他の守護聖どもの前でよけいな事を喋るな」
 「またそんなお言葉の悪い事を‥。私にはあんなに優しくして下さるのに‥」

 クラヴィスはアンジェリークの前では完全にペースを乱されていた。
だが、それがまた心地よくもあった。

 「クラヴィス様、あの時の事を覚えてらっしゃいます?」
 「あの時?」
 「ええ。星をみようと誘って下さった時です」
 「‥ああ。もちろんだ」
 「‥‥あの時、初めてキスをかわして‥」
 「夜の闇の中でも解る程、お前は見る見る赤くなっていったな」
 「クラヴィス様だって、顔に触れた手が震えてましたよ?
  今だから言えますけど、私あの時までは恋に恋してるような感じだったんです。
  でも初めて触れあって、その瞬間に解ったんです。この人だって‥」
 「いったい何が解ったというのだ?」
 「‥さあ‥。今でも解りません。クラヴィス様が私にとってなんなのか‥。
  きっと、私を一番傷つけて、一番泣かせて、一番愛してくれるって人かもしれませんね。
  クラヴィス様にはたくさん泣かされましたもの。
  それ以上に幸せな気持ちにもして頂きましたけど‥‥」

 ふとクラヴィスの顔を見つめると、黒い瞳が近付いてきた。
それに応じるようにアンジェリークが瞳を閉じると、クラヴィスの唇が
アンジェリークのものと重なった。唇が触れあう程度の軽いキス。

 「‥‥ほら‥。こんな具合に‥」
 「聖地といえど、夜は冷える。 中に戻ろう」
 「もう少しだけ、こうしていてもいいですか?‥もう少しだけ‥‥」

 クラヴィスはアンジェリークの体が
これ以上冷えないように後ろから優しく抱き締めた。
アンジェリークも背中越しにクラヴィスの体温を感じながら
ただ、星空を見つめていた。
この幸せがいつまでも続くように、と願いを込めながら‥‥‥。





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これは某サイトさんのクリスマス企画用に考えて書いたものです。
聖地にクリスマスがあるのかどうかは解らないけど、リモージュちゃんなら
作ってしまいそうですね。それに新女王陛下の初めての催し物てな事で、結構盛大に
開かれたと予想されます。会話が多いのはもうこの頃からなんですねー。






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