疑惑の真相



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 ある日の昼下がり、オリヴィエは暖かな陽の当たる宮殿の廊下を歩いていた。
 向かう先はルヴァの部屋。
喉が乾いたのでお茶を御馳走してもらう為に押しかける途中なのだ。

 そろそろルヴァの部屋が見えてくるというところで、オリヴィエは
地の守護聖の執務室の前で佇む人影を見て驚いた。

 「‥あらジュリアスじゃないの、珍しい‥‥。
  わざわざここまで出向くなんて何かあったのかしら‥‥?」

 オリヴィエが声をかけるよりも早く、扉が開いて中から部屋の主が現れた。
声をかけるタイミングを失ったオリヴィエは、不本意ながらも
立ち聞きをしている様な状態になってしまった。
 しかし、ジュリアスの用が口頭ですぐすむものなら、その後で出ていけばいいか、と
柱の影に身を潜めたが、聞こえてきた会話に思わず身を乗り出してしまう‥‥‥。

 「その、約束は夜だったのだが我慢できずに来てしまったのだが‥‥‥‥」
 「‥‥はぁ‥」

 (何!?。“夜の約束”‥って何!?しかも“我慢できない”って−??)

 その時オリヴィエの頭の中には数日前の、
リュミエ−ルとオスカ−とお茶をした時の出来事が鮮烈に甦っていた。


 《あの二人はできてるのよ!!》


 それは自分の台詞だった。
それ以来3人はルヴァとクラヴィスに“疑惑”の視線を向けていたのだが‥‥。

 オリヴィエはフラッシュバックした記憶と今現在耳にした現実が、重なりあってしまっていた。
しかも、重なりあう様なアヤシげな会話。

 「‥仕方ないですねぇ。いいですよ、中に入ってください。さぁ‥‥」

 (ルヴァ!!。あんたクラヴィスだけじゃなかったの−!?)

 驚きのまま、オリヴィエは部屋の中に招かれて消えて行くジュリアスの後ろ姿を見送っていた。
 また、ジュリアスの背中に回されたルヴァの手が妙に色っぽく‥‥‥。
オリヴィエは更に困惑し、閉められた扉に出刃亀状態に張り付いた。



 (‥‥‥‥‥‥‥)


  =あぁ〜もうこんなにカタクなってるじゃないですかぁ〜〜。
   昨日あんなにシタというのに‥‥、あなたの身体は一体どうなってるんですか〜?
  =‥‥すまぬ。執務中だというのに、押し掛けてしまって‥。
  =ああ!。いいんですよ。気にしないでください。
   あなたが気持ちヨクなってくれるなら、私も頑張り甲斐があるというものですからね〜。
   さて、では始めましょうか。装飾品と上着を脱いで貰えますか?
  =ああ。


 かちゃ‥‥‥コト‥‥‥しゅるしゅる‥‥‥‥‥‥


 (何なの?。‥‥‥あの二人‥‥‥いや、ルヴァったら一体何考えてるのよ〜〜!!
  あんたの事、結構尊敬してる所もあったのに!!)


 「何為さってるんですか?、オリヴィエ様」
 「!!!!!」

 ふいに後ろからかけられた声は、マルセルのものだった。
ついでにランディとゼフェルもいる。
オリヴィエは珍しく、声をかけられるまでその存在に気がつかなかった。
 しかし、平面は整然を装って振り返り、相手をした。
何が何でも、この3人には気が付かれてはイケナイ!。
この部屋の中で起こっている”情事”を‥‥‥。


 「あ〜ら、3人揃ってどうしたの?」
 「クッキーを焼いたので、ルヴァ様と一緒にお茶の時間にたいかな‥って。
  オリヴィエ様も一緒にどうですか?。いっぱい焼いたからまだまだありますよ?」
 「‥ふ‥‥ふ〜ん。美味しそうだけど、ルヴァなら今はいないわよ」
 「何言ってンだよ。いるんだロ、中に」
 「オリヴィエ様?」
 (〜〜〜〜〜〜!!)

ジリジリと迫る3人から扉を覆い隠すように張り付きながら、オリヴィエは言い訳を考えていた。

 「‥‥…そ‥…の‥!!。本に夢中になってて、なぁ〜んにも聞こえてないわよ。
  それであたしも帰る所だったのよ」
 「ふ〜ん、そうなんですか。ならお邪魔しない方がいいかな?」
 「そうね!。出直しなさい。あたしもそうするから」
 「‥わかりました。オリヴィエ様だけでもどうですか?、クッキー」
 「‥あ、そうね。また今度にするわ。お茶の席の時にでも」
 「は〜い」




 「残念だなぁ‥‥」
 「リュミエ−ル様の所に行ってみようか」
 「ったく、しょーがねぇなーおっさんは‥」
 「なんだよ、ゼフェルだってー‥‥」


 などと話をしながら3人はその場から遠ざかって行き、オリヴィエはほっと胸を撫で下ろした。
 オリヴィエは改めて深呼吸をして困惑する出来事を整理し始めた。
目にした出来事と、耳にした会話、それらを順を追って思いだし、
自分の勘違いか思い過ごしである事を祈りながら、再び扉に耳を付ける‥‥。


 (‥‥‥‥‥‥)


 =‥‥ぁっ‥‥ふ‥ん‥‥
 =どーですか?。‥‥ここは?
 =あっ‥‥ああぁっ‥‥‥‥っ
 =最初の頃に比べて声も出るようになってきましたね‥‥。我慢しなくていいんですよ?。
  この部屋には私とあなたの二人しか居ないのですから‥‥
 =そのような事っ‥‥‥‥ぅあっ‥‥!


 (‥‥‥‥やっぱりそうなの?。ルヴァ‥‥あんたジュリアスともできてるの?)


ショックを受けているオリヴィエの耳に、とどめとも言える二人のやりとりが聞こえてきた。

 =あーそれにしても、あなたがこんな色っぽい声を出すなんて‥‥
  なんか‥‥楽しいですねぇ
 =!!////)
 =あはは。わかってますよ。誰にも言いませんよ。
  あなたが私の所にナニをシに通っているのか‥‥
 =ルヴァ!////)
 =あー“シにくる”というよりは“サレにくる”と言った方が正しいですねぇ
 =ルヴァッ!!///////)



 何やら楽しそうに聞こえる会話をドア越しに聞いて、
ガックリと力が抜けるのはオリヴィエである。

 「‥‥何よ。リュミちゃんから聞いた話を100%信じても、
  こっちの方が全然本命じゃない‥‥。あんた達って‥‥あんた達って
  そんな関係だったのー−!?」

 オリヴィエは暗〜い空気を纏いながら、柱の影に佇んでいた。
暫くすると、来た時とは別人のように”すっきり”した表情のジュリアスが
ルヴァの執務室を出て、自室へと戻って行く。
ジュリアスが角を曲がって見えなくなると、オリヴィエは身を隠していた柱から
姿を現した。

 「‥‥‥‥‥‥‥決めた。ルヴァの口からはっきりと本当の事を問いただしてやるわ!」


 オリヴィエは珍しく目尻を釣り上げて緊張した面持ちで執務室の扉をノックした。
中からはいつも通り、の〜んびりしたルヴァの返事が聞こえ
オリヴィエは意気揚々と部屋の中へ飛び込み、一直線にルヴァの前まで歩み寄った。


 「な‥‥‥‥なんですか?オリヴィエ。なんか様子が変ですよ〜?」
 「(っ誰のせいだと!!)‥‥さっき、
  ジュリアスがこの部屋から出て行くのを見たんだけど、一体二人で何をしてたの?」
 「‥‥え〜‥‥ぇと」
 「はっきり教えて頂戴!。本当の事が知りたいのよ!」
 「??。どうしたんですか?、オリヴィエ。
  ‥‥‥‥!、あぁ、もしかしてあなたもしてもらいたいのですか?」
 「シテ!?。っあんたそんな事‥!!!」
 「違うんですか?。私の事を誰かから聞いて来たのでは?」
 「ルヴァ、そんな自分を安売りしちゃダメよ!。もっと自分の事大事にしてよ!」
 「はぁ‥??。安売りしているつもりはないですが‥‥‥
  ただ気持ちよくなってもらえれば、それで私は満足なんですよ〜」
 「だからそれが安売りだって言ってんの!!!」
 「‥‥‥‥‥では、お金をとった方がいいんですか?」
 「なお悪いわよ!!!」

 オリヴィエはまさに血管が切れそうな程、過去これ程怒りを感じる事はない程に
興奮し切っていた。しかし、当人のルヴァはのらりくらりと自分の言葉をかわしている。

 「クラヴィスとだってそんな関係なんでしょう!?」
 「は??。クラヴィス??。彼にはしてあげた事はありませんよ?。必要無いですからねぇ」
 「クラヴィスには必要無い???。どうして?」
 「‥‥どうしてと私に聞かれても困るんですがー、彼はあまり根を詰めないですからね。
  ジュリアスにはどうしても必要なので、こっそり覚えたんですよ〜。
  彼の為に‥‥なんて事がジュリアスにしれたら素直に従ってくれませんからねぇ‥‥」
 「‥‥‥ちょ‥‥‥‥ちょっとルヴァ‥‥‥何の話をしてるの???」
 「え?。だから”マッサージ”の話でしょう?」
 「はあ!!??」
 「え〜各地の資料を集めれば集める程、色んなマッサージ方法がありましてね。
  私は”つぼマッサージ”というのを覚えたんですよ−。
  人間のからだには、目には見えない数百にも及ぶ”つぼ”があるらしいのです。
  それらを効率良く刺激してあげれば、肩の凝りや、筋肉のはり、果ては
  身体の中の色んな臓器の働きをも正常に活性化させたりもできるみたいで‥‥
  面白いですねー‥‥世の中にはまだまだ私の知らない事が山ほどあるんですよ。
  そう思うとわくわくして、最後の方はほとんど自分の為に勉強してましたねー」

 オリヴィエはルヴァの楽しそうな笑顔を見ると、どっっと疲れが来て
近くのソファにどっかりと腰を落とした。へなへなと肩の力が抜け体中の力が抜けていた。

 「あら〜?どうしましたか〜〜オリヴィエ?」
 「‥‥‥‥まっったく、人騒がせにも程があるわよ、あんた。
  それならそれで、もうちょっとまともな会話をしなさいよ!
  さっきのあんたとジュリアスの会話だけを聞いたら、誰だって変な事思うでしょう!?」
 「変な事?‥‥‥‥ってどんなことですか〜〜?」
 「わざと聞いてるでしょ、あんた。‥‥‥‥も〜〜〜〜〜ぅ‥!」

 オリヴィエはソファの横にどっかりと足を投げて、反対側のひじ掛けの部分に
頭をおいて横になった。額に手をあてて、あの、複雑な思いでいた時間を
思い出しては、腹がたつと言うか、いつになく冷静に慣れなかった自分が情けないと言うか‥‥。
そんなオリヴィエに、ルヴァは口の両端をくっとあげて声をかけた。


 「オリヴィエ〜?。お疲れでしたらあなたにもマッサージをしましょうか?」
 「‥‥‥‥‥‥‥」
 「はい?」
 「ルヴァ‥‥‥あんた、マッサージしてあげたいんじゃなくて、ただ単にしたいだけなんでしょ」
 「えぇぇ!?、ど‥‥ど‥‥どーして解りましたか?」
 「分かりやすいのよ、あんたは。覚えた事を試してみたいだけなのね。
  素直にそう言うならやらせてあげるわよ★」
 「‥‥え〜〜‥‥‥と‥‥‥。‥‥‥‥はい」

 まるでどちらが年上なのか‥‥‥。ルヴァは子供じみた好奇心を見抜かれたような気がしていたが
オリヴィエがそれに対しては何も言わず、うつ伏せになったので
その背中に手をあててマッサージを始めた。

 「あ〜〜、やはりあなたもクラヴィスと同じでそう凝ってませんね〜〜」
 「当〜然でしょ。1日の疲れを明日に持ち越すなんて事、私がすると思う?」
 「ですよね〜〜。はぁ、ジュリアスもそうあって欲しいんですがね‥‥‥っと。
  ‥‥‥ここの辺りですかね〜〜。よっ」
 「★★★☆★★★★★」
 「あ〜、それでも少し堅いですかね‥‥‥。オリヴィエ運動してますか?」
 「なっ‥‥‥(ちょっとこれ!!)」
 「少しは身体を動かさないといけませんよ〜」
 「‥‥‥っん‥‥‥‥あっ‥‥!!!」
 「あれ?、あなたでもそんな声が出るんですね‥‥。ジュリアスといいどーしてでしょうかねぇ?」
 「‥‥っ‥あんたってほ‥‥っんと‥‥たぬきよね‥‥」
 「はい?。何か言いましたか?」
 「(めちゃくちゃ上手いじゃないの。‥‥これ気持ちよすぎ‥‥)」






 草花を照らす陽がわずかに動いた頃、ルヴァの執務室の扉が開いて
その中から足取りも軽やかにオリヴィエが出ていった。
歩きながら両手を組んで背伸びをし、その片手を首にあてた。

 「やだ‥‥‥マジで上手いわ。‥‥これからたまにしてもらいに来ようかな‥‥」

 オリヴィエは自室に戻って中央奥にある椅子に座り込んだ。
しばらくの間留守にしただけで、机の上には書類が幾つか置かれている。
それらに目を通そうとしたところでオリヴィエは、誤解したままの二人の事を思い出した。

 「あ!‥‥‥‥どーしようか‥あの二人‥‥」

いわずも知れるオスカーとリュミエールである。

 「ん〜〜。クス‥‥面白いからホントの事だまっとこーかなぁ‥」

 しかし、ホントの事をいったところでそれを信じるのだろうか?。
ルヴァはクラヴィスの髪で三つ編みをしていただけだなんて‥‥
それならば「ルヴァとクラヴィス恋仲説」のまま二人の様子を眺めて楽しむのも
おもしろそーかも☆、などとぼぅっとしながらも”にんまり”と意地の悪そうな笑顔を浮かべた。

 オリヴィエと付き合いの長い夢の守護聖付きの秘書は、またよからぬ事でも
思い付いたのだろうか‥‥と、その対象となる何所かの守護聖様方に
心の中で謝罪の言葉を呟いた‥‥‥。


 時間の流れと季節の移り変わりの麻痺した聖地で、麗しき夢の守護聖様は
同僚の守護聖様の苦悩する姿を、心の中で赤い舌を出して眺めていた。





■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■END




第2弾。うふ。今度はより妖しい関係が‥‥‥‥。
今度のお相手はジュリアスかオリヴィエか‥‥。
とても長くなってしまったのが、今一つ。
コメディなお話は、もっと簡潔にしたかったわ〜。
前回と重ねて、ルヴァファーストな方、ごめんナサイ。







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