疑惑



KIEFER ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 「はぁ‥‥」

 リュミエールはこれで今日何回目か解らない溜め息をこぼした。
一緒にティータイムを楽しんでいたオスカーとオリヴィエは、
リュミエールの口から溜め息が漏れる度に、何があったのか、という様な視線を
本人に向けるが、当人はそれに気付かず、また新しい溜め息をこぼしている。

 「あ〜もうやめやめ!。いい加減話して頂戴」
 「えっ?。急に何ですか、オリヴィエ」
 「気付かないとは言わせないわよ。一体今ので何回溜め息ついてると思ってるの?
  21回よ!?21回!」
 「お前も暇人だな。わざわざ数えてたのか?」
 「あんただって気になってしょうがないって顔してたじゃない」
 「あ‥‥やめてください」

 テンションが上がりそうな二人の間に割って入って、リュミエールはオスカーと
オリヴィエの言い合いを止めた。

 「リュミエール、別に話したくないならそれでもいいが
  それならそれでその鬱陶しい溜め息だけは止めてくれないか」
 「‥‥いえ、別にそうゆうつもりでは‥‥」
 「なら話してみなさいよ」
 「‥‥‥‥‥‥‥」

 リュミエールはしばらく沈黙すると、ぽつりぽつりと喋り始めた。




=数日前=



 あれは、珍しいお茶が手に入ったのでルヴァ様に差し上げようと
ルヴァ様の執務室にお邪魔した時の事でした。
ノックをしても中から返事がないので、お留守かと思い出直そうとしたら
扉がきちんとしまっていない事に気がついたのです。

 ルヴァ様は本に夢中になってしまわれると、他に何も耳に入らない時がありますので
失礼かとは思いましたが、部屋の中に入る事にしました。

 いつもの執務用の大きな机にはいらっしゃいませんでしたが、その奥の書庫に
いらっしゃるかと、そちらへ向かいましたら‥‥‥‥








 「‥‥‥‥それで?」
 「ルヴァ様はいらっしゃいましたが、その影になっていた長椅子に‥‥その
  クラヴィス様がいらっしゃったのです」
 「ルヴァの所にクラヴィス様が‥‥?それがどうかしたのか?」
 「ルヴァ様はわたくしに気がついていらっしゃらないようで、
  クラヴィス様も深く眠っておられるようでした。
  わたくしはそっとルヴァ様に声をかけようと思ったのですが‥‥‥‥‥
  その‥‥」
 「なぁに?」

 リュミエールの話はそこで躓いてしまった。オリヴィエがその続きを促すが
中々口は開かない。

 「どうした?クラヴィス様がルヴァの所で眠っていたのがそんなにショックか?」
 「違います!。そうではなくて‥‥お声をかけようとしたら
  ルヴァ様がクラヴィス様の髪をこう‥‥‥‥‥‥」

 それまで俯いて喋っていたリュミエールは、ふっと顔をあげると
オスカーとオリヴィエを見渡し、オリヴィエにそっと右手を伸ばした。
優しく撫でるように手の平で顔の輪郭をなぞり、耳の辺りから髪の束を一総手に取ると
そのままするすると手を降ろした。
 急なリュミエールの行動にオスカーは飲みかけていた紅茶を吹き出しそうになり
オリヴィエはオリヴィエで硬直していた。

 「‥‥‥こう、撫でられたのです。‥‥あれをわたくしはどう解釈したらよいのでしょう?」
 「‥‥どうって‥‥‥‥‥」
 「オスカー、あなたはクラヴィス様の髪に、そのように触りたいと思いますか?」
 「‥‥まさか!。美しいレディならともかく、何で俺がクラヴィス様を‥‥‥」
 「そうですよね‥‥‥‥普通そのような事はいたしませんよね?
  ならばあれはどういう事なのでしょうか‥‥‥‥」
 「できてるわね」

 オリヴィエの思いもしない台詞に、オスカーはぎょっと目を見開いてオリヴィエを
睨んだ。リュミエールもその台詞に反応しオリヴィエに視線を向ける。

 「さっきリュミちゃんがしたように、ルヴァがクラヴィスにしたのなら
  十中八九、あの二人はできてるわ!」
 「オリヴィエ!!」
 「なによ。あたしならともかく、ルヴァがその気もなしに人の髪に触るとは思えない。
  あの二人は付き合いも長いし、できてるのよ!」
 「オリヴィエ、リュミエールにその意味が解る訳無いだろう!?」
 「失礼ですね、オスカー。わたくしにだって解ります。
  その‥‥‥ルヴァ様とクラヴィス様が恋仲であるという意味でしょう?」
 「‥‥‥まぁ、そうだが‥‥‥」
 「やはりそうなのですね。‥‥…わたくしは一体どうしたらよいのでしょう‥‥」
 「どうするもこうするも、知らないフリが一番よ」
 「‥‥…それしかありませんか‥‥‥やはり‥‥‥」





*********





 そう話がまとまりかけていた頃、当人のクラヴィスはまたルヴァの書庫で
心地よい眠りについていた。

 ルヴァの執務室に隣接している書庫には、ルヴァが各惑星から揃えた本もあるが
そのほとんどが、先代の地の守護聖から譲り受けたものばかりである。
一冊一冊にじっくりと目を通すルヴァは、今だその全てを読んでいない。
ルヴァにとっても読書に没頭できる、時間の流れの緩やかな空間なのだ。

 そして何故クラヴィスがこの書庫で、読書をする訳でもなく眠りに落ちているかというと
クラヴィスにとっても、この地の先代が残した書庫は落ち着く場所であった。

 地の先代はクラヴィスと、それからジュリアスにも大変深い馴染みのある人物で
先代が好んで使っていた香の匂いが染み込んだこの書庫独特の薫りは
我が家に帰って来たかのような安心感をクラヴィスに与えるのだ。






 「クラヴィス‥‥‥‥クラヴィス起きてください。そろそろ執務に戻らないといけませんよ〜」

 心地よい眠りをさまたげられ、あるいはそれが地なのか
クラヴィスは機嫌の悪そうな表情をルヴァに向けたが、ルヴァはそれをものともせずに
起き上がったクラヴィスににっこりと笑いかけた。

 顔にかかる髪をクラヴィスがけだるそうに手で避けると、その先に妙な手触りがある。
その手触りの原因を知ると、一層機嫌の悪そうな目つきでクラヴィスはルヴァを睨んだ。

 「‥‥‥ルヴァ、これは一体なんだ」
 「あ〜。ふふ、上手くできているでしょう?「三つ編み」というのだそうですよ。
  ずっと試してみたかったのですが、「三つ編み」ができる程、私は髪が長くありませんし
  あなたの髪で試させてもらったんです〜」
 「‥‥‥‥‥‥#」
 「綺麗にできているでしょう?。前に来た時も試させてもらったんですが
  思った以上に難しくてねぇ〜。今日は綺麗にできたので是非、出来栄を見てもらおうと思って
  そのまま残しておいたんですよ〜。どうですか?」

 クラヴィスの黒髪はこれ以上ないという程、見事な三つ編みでまとめられていた。
ここまでされても気がつかなかった自分に腹が立つのと同時に、クラヴィスは
眉間に思いっきり皺を寄せて、無言でルヴァを睨み付けた。

 「他の人にも見てもらいたいのですが〜〜だめ‥‥‥‥‥‥ですね?やっぱり‥‥」
 「‥‥‥‥‥‥#」

 ルヴァは「はぁ」と残念そうに一つ溜め息を吐くと、クラヴィスの三つ編みを
解きにかかった。クラヴィスの髪はもともとストレートが強くかかっているので
解いても三つ編みのあとが残る事もなく、いつも通り”さらり”と黒い衣の上を滑って行った。

 「‥‥それにしても、ジュリアスの髪の毛は、あなたより細くて
  もっと柔らかくてふわふわしていましたが
  クラヴィスの髪の毛は、ジュリアスよりさらさらとしていて
  とても触り心地がいいですね〜」
 「‥‥‥‥ルヴァ、ジュリアスにもしたのか?」
 「ええ、やはり眠っている隙に。この部屋はあなた方をいつもでは考えられない程
  無防備にさせる力がるようで、ある意味私は楽しいですよ。
  私はいつでも構わないので、また来てくださいね〜」

 そういって”にっこり”笑うルヴァの笑顔は、満たされたようであった。






*********





 「しかし、道徳的にもやはりお止めした方がよいのではないでしょうか?」
 「だが本当に想い合っているなら、別にいいんじゃないのか?
  俺は理解できんが‥‥」
 「そぅねぇ‥‥。気持ちばっかりは簡単に変えられるものじゃないからねぇ‥
  あたし達にできる事は静かに見守る事くらいなんじゃないかな‥」





 そんな、真実など露程も知らずに、リュミエール、オスカー、オリヴィエは
複雑に頭を悩ませている。話し合えば合う程その内容は真実から遠のいているが‥‥





3人の頭の中には「ルヴァとクラヴィス。恋仲説」が染み始めているようだ。





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うふふ、結局自分で書いてみました。地闇。
そうよね、読みたいカップリングがなかったら、自分で書いてみればイイのよね。
でも自分じゃ、いまいち上手くかけないんだよ〜ん(T.T )
それにしても、ルヴァが妖しいやつになってしまったわ−。
フェチというかマニアというか‥‥‥うぅ‥
ルヴァファーストな方、ごめんナサイ。







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